パーキンソン病関連疾患を知る
パーキンソン病・進行性核上性麻痺(PSP)・大脳皮質基底核変性症(CBD)
パーキンソン病・進行性核上性麻痺(PSP)・大脳皮質基底核変性症(CBD)
この3つはどれも「動きがゆっくりになる・体がこわばる・震える・転びやすい」という共通症状(パーキンソニズム)を起こす脳の病気です。
介護保険の特定疾病では、症状が似ていて鑑別が難しいため3つまとめて1つの疾病として扱われます。40〜64歳でも介護保険が使える16疾病のひとつ。
3つとも、脳の神経が少しずつダメになって体が思うように動かなくなる病気。「動きがスローモーション」「体がカチカチ」「手が震える」「よく転ぶ」が共通点。
症状が似てて区別が難しいから、介護保険では3つまとめて1セットで「特定疾病」扱い。だから40代でも介護保険が使える、というわけ。
3つの中で最多。ドパミン神経の脱落。L-ドパ薬がよく効く。国内約20万人。
難病指定。眼球運動障害+早期からの転倒が特徴。L-ドパが効きにくい。国内約1万人。
難病指定。左右差が強い症状+失行が特徴。「自分の手が言うことを聞かない」感覚。国内約4,000人。
三兄弟の長男、一番メジャー。薬がちゃんと効くから、長く付き合える病気。日本に約20万人。
「目が動かしにくい+初期からよく転ぶ」が特徴。薬が効きにくいから進行が早く、難病指定。約1万人。
「片側だけ症状が強い」「自分の手が勝手に動く」みたいな不思議な症状。難病指定。約4,000人と一番レア。
脳の中脳「黒質(こくしつ)」のドパミン神経細胞が少しずつ減ることで、運動の指令がうまく伝わらなくなる病気。原因は不明(α-シヌクレインというタンパク質の異常蓄積が関与)。
発症年齢は50〜60歳代が多く、ゆっくり進行する。10〜20年単位の長い経過。
脳の中にある「ドパミン」という体を動かす指令を出す物質を作る場所(黒質)が、年とともに弱ってしまう病気。原因はまだはっきりしていません。
50〜60代で発症することが多くて、進み方はゆっくり。10〜20年かけて少しずつ進行します。
1. 振戦(しんせん):安静時に手足が震える。「ピル丸め運動」と呼ばれる親指と人差し指がこすれる動き。片側から始まるのが特徴。
2. 筋強剛(きんきょうごう):関節を他動的に動かすとガクガク・カクカクする抵抗(歯車現象・鉛管現象)。
3. 無動・寡動(むどう・かどう):動きが遅く・少なくなる。表情が乏しくなる(仮面様顔貌)。声が小さい。字が小さくなる(小字症)。
4. 姿勢反射障害:バランスを崩したとき立て直せない。前のめりで歩く(前傾姿勢)、小刻み歩行、突進歩行、すくみ足。進行期に出現。
1. 震える(振戦):じっとしてるときに手足がプルプル震える。指で何かをこねるような動き。最初は片側だけから始まるのがポイント。
2. 体がカチカチ(筋強剛):他人が腕や脚を動かそうとすると、ガクガク引っかかったり、鉛みたいに重く感じる。
3. 動きが遅い・少ない(無動):何をするにも時間がかかる。表情が消えて能面みたいになる、声が小さくなる、字がだんだん小さくなる、なども特徴。
4. バランスが取れない:よろけても踏ん張れない。前かがみで歩く、ちょこちょこ小刻みに歩く、走り出すと止まれない、最初の一歩が出ない(すくみ足)。進行してから出てくる。
自律神経症状(便秘・起立性低血圧・排尿障害・発汗異常)/ 睡眠障害(レム睡眠行動障害:夢で叫ぶ・暴れる)/ 嗅覚低下(運動症状の前から) / うつ・不安 / 進行期の認知症。
便秘がひどい、立ちくらみ、おしっこのトラブル、汗の異常/夢を見ながら叫んだり暴れたりする/においがわからなくなる(運動症状より先に出ることも!)/気分が落ち込む/進行すると認知症が出ることも。
パーキンソン病の進行度を表す世界共通の物差し。Stage Ⅲから介護保険の対象になる目安。
世界中のお医者さんが使う共通のものさしで、5段階あります。レベル3になったら介護保険を使い始める目安。
| Stage | 状態 |
|---|---|
| Ⅰ | 片側のみの症状。日常生活はほぼ問題なし |
| Ⅱ | 両側性の症状。姿勢反射障害なし。日常生活・通院は自立 |
| Ⅲ | 姿勢反射障害が出現。日常生活に介助が必要なことも。介護保険対象の目安 |
| Ⅳ | 立ち上がり・歩行困難。日常生活に介助が必要 |
| Ⅴ | 車いすまたは寝たきり。全介助 |
L-ドパ製剤:脳内で不足するドパミンを補う最も効果的な薬。症状を劇的に改善。
長期服用でウェアリング・オフ現象(薬の効き目が短くなる)やジスキネジア(不随意運動)、オン・オフ現象(急にスイッチが切れたように動けなくなる)が出現。
その他:ドパミン作動薬、MAO-B阻害薬、COMT阻害薬、抗コリン薬。進行期は脳深部刺激療法(DBS)も選択肢。
L-ドパ=足りなくなったドパミンを補うお薬。これが効くから、パーキンソン病は薬で症状をコントロールできます。
ただし長く飲んでると、「薬の効いてる時間が短くなる」「体が勝手にクネクネ動いちゃう(ジスキネジア)」「急にスイッチが切れて動けなくなる」みたいな副作用が出てきます。
他にも何種類かお薬があって、進んだ段階では脳に電極を入れる手術(DBS)という選択肢もあります。
脳幹・大脳基底核・小脳などに異常タウタンパクが蓄積することで神経が障害される病気。原因不明、根治療法なし。国の指定難病。
発症は60歳代が多く、進行はパーキンソン病より速い。発症後5〜10年で寝たきりになることが多い。
脳のいろんな場所に異常なタンパク質(タウ)がたまって、神経を壊してしまう病気。原因はわからず、治す薬もまだありません。国が「難病」に指定しているから、医療費の助成があります。
60代で発症することが多くて、パーキンソン病より進み方が早い。発症から5〜10年で寝たきりになるケースが多いです。
1. 早期からの易転倒性(後方転倒):発症1年以内に何度も転ぶ。特に後ろ向きに突然倒れる。バランスを取ろうとせず棒のように倒れるのが特徴。
2. 核上性垂直性眼球運動障害:目を下に動かしにくい(後に上下とも)。階段を降りるとき、足元を見られず転ぶ。視線を合わせない・キョロキョロしない印象を与える。
3. 頸部後屈・体軸性ジストニア:首が反り返るように後ろに反る(パーキンソン病とは逆の前傾と対照的)。驚いたような表情になる。
1. 初期からよく転ぶ・特に後ろに倒れる:発症して1年以内にしょっちゅう転ぶ。手をつかずに棒みたいにバタンと後ろに倒れるのが特徴的で危ない!
2. 下を向けない:眼球の動きが悪くなって、目線を下に向けるのが難しくなる。だから階段を降りるとき足元が見えなくて転ぶ。「目が合わない人」に見えるけど病気のせい。
3. 首が後ろに反る:パーキンソン病が前かがみなのに対して、PSPは首がそっくり返る。びっくり顔みたいな表情に見えます。
💡 その他:構音障害・嚥下障害が早期から。仮性球麻痺(感情失禁=些細なことで泣く・笑う)。前頭葉症状(自発性低下・把握反射)。L-ドパ反応性は乏しい。
💡 他にもある特徴:早い段階からしゃべりにくい・飲み込みにくい/ちょっとしたことで急に泣いたり笑ったりする/何をするにもやる気が出なくなる/パーキンソン病に効くL-ドパが効きにくいのがつらいところ。
大脳皮質と大脳基底核の両方に異常タウタンパクが蓄積する病気。原因不明、根治療法なし。国の指定難病。
発症は60歳代が多く、進行性。発症後5〜10年で全介助になることが多い。3疾患の中で最も稀。
PSPと同じ異常タウタンパクが、今度は大脳の表面と奥の両方にたまる病気。原因不明、治す薬もなし。難病指定されています。
60代発症が多く、5〜10年で全介助に。3つの中で一番珍しい病気です。
1. 著明な左右差:症状が片側の手足だけ強く出る。「右手だけ動かない」「左半身だけこわばる」など。
2. 失行(しっこう):麻痺はないのに目的の動作ができない。服のボタンをかけられない、歯ブラシの使い方がわからない。
3. 他人の手徴候(エイリアンハンド):自分の手が意思に反して勝手に動く。「自分の手じゃないみたい」と訴える。
4. 皮質性感覚障害:触られた場所はわかるが、何で触られたか・何の形かわからない。
5. パーキンソニズム+ジストニア(片側手足の捻れ・固定姿勢)。
1. 左右で症状が全然違う:右手だけ動かないとか、片側だけがガチガチ、というように左右差が強烈。
2. 動かし方を「忘れる」:手は動くのに、ボタンのかけ方や歯ブラシの使い方がわからなくなる。これを「失行」と言います。
3. 自分の手が勝手に動く:「私の手じゃない!」「左手が右手の邪魔をする!」と訴える、不思議な症状。エイリアンハンドと呼ばれます。
4. 触られた感覚はあるけど何かわからない:目を閉じてカギを握らされても「何かわからない」状態。
5. パーキンソンっぽい動きの遅さに加えて、手足がぐにゃっと曲がって固まる姿勢が出ることも。
| パーキンソン病 | PSP | CBD | |
|---|---|---|---|
| 発症年齢 | 50〜60代 | 60代 | 60代 |
| 進行速度 | ゆっくり (10〜20年) | 速い (5〜10年) | 速い (5〜10年) |
| L-ドパ | ○ よく効く | △ 効きにくい | △ 効きにくい |
| 振戦 | ◎ 安静時振戦 (片側から) | △ 少ない | △ 少ない |
| 転倒 | 進行期に出現 | ◎ 早期から後方転倒 | 左右差ある転倒 |
| 姿勢 | 前傾姿勢 | 頸部後屈 | 左右非対称 |
| 眼球運動 | 正常 | ◎ 下方視障害 | 正常〜軽度 |
| 左右差 | あり (発症側優位) | 少ない (対称的) | ◎ 強い左右差 |
| 特徴症状 | 仮面様顔貌 小刻み歩行 | 易転倒性 感情失禁 | 失行 エイリアンハンド |
| 嚥下障害 | 進行期 | ◎ 早期から | 進行期 |
| 難病指定 | ○(重症のみ) | ◎ | ◎ |
💡 3つを見分ける鍵:「薬が効くか」「転倒の早さ」「目の動き」「左右差」。介護現場では「PDっぽく見えても薬が効かない」「すぐ後ろに転ぶ」「片側だけ重い」場合、PSP/CBDを疑います。
💡 見分けるポイント:「薬が効くか」「転びやすさ」「目が動くか」「左右どっちかだけか」。「パーキンソン病みたいに見えるけど薬が効かない」「すぐ後ろに転ぶ」「右半身だけおかしい」みたいなときは、PSPかCBDを疑います。
3疾患とも転倒リスクが極めて高い。特にPSPは後方への突然の転倒に注意。
環境整備(段差・敷物・コード除去)、見守り体制、立ち上がり・歩行の付き添い、必要に応じてヘッドギア使用も。
進行とともに飲み込みが悪化。誤嚥性肺炎が主な死因のひとつ。
食事姿勢(やや前傾・顎引き)、食形態の調整(とろみ・刻み・ペースト)、ゆっくり摂取、食後30分は座位保持。
声が小さい・表情が乏しい・反応が遅い=「無関心」ではない。本人の理解は保たれていることが多い。
返事を急かさない。閉じた質問(はい/いいえ)を活用。文字盤・筆談も。
パーキンソン病は「時間どおりの内服」が命。1回飲み忘れただけで動けなくなることも。
食事との関係(L-ドパは空腹時吸収◎・タンパク質と競合)にも注意。
3つともめちゃくちゃ転びます。特にPSPは突然後ろに倒れるから本当に危ない。
床の段差・カーペットのめくれ・コード類は徹底的に片付ける。立ったり歩いたりするときは必ずそばで見守り。場合によってはヘルメットを使うことも。
進むと飲み込めなくなって、誤嚥して肺炎になるのが一番怖い。誤嚥性肺炎で亡くなる人が多い。
食べるときは少し前かがみ・あご引き、とろみをつけたり刻んだり。食後30分は寝かせない(座っててもらう)。
表情が消えて声が小さくて反応が遅い=「興味がない」じゃない。頭はしっかりしてる人が多いです。
「早く返事して」と急かさない。「はい/いいえ」で答えられる質問にしたり、文字盤や筆談を使うのもアリ。
パーキンソン病の薬は時間ピッタリに飲むのが超大事。1回忘れただけで「動けない!」になることも。
L-ドパは空腹のときの方が効くけど、タンパク質(肉・魚・卵)と一緒だと効きにくくなるので、飲むタイミングに注意。
「最初の一歩が出ない」「歩いていて急に足が床にくっつく」状態。視覚的・聴覚的キューが有効。
・床に線やテープを貼って「またぐ」目標を作る
・「1・2・1・2」と声をかけてリズムをつくる(メトロノーム効果)
・「これをまたいで」と物を置く
・足を引っ張らず、声で誘導するのが基本
パーキンソン病の人が「歩こうとしても最初の一歩が出ない」「歩いてる途中で急に足がくっついて動かない」とき、目で見える目標や音のリズムがあると不思議と動けるようになります。
・床にテープを貼って「またいで」と言う
・「いち、に、いち、に」と声でリズムを取る
・足元に何か物を置いて「これをまたいで」
・無理に引っ張らない(バランス崩して転倒します)。声と視覚で誘導するのがコツ。
薬が効いている時間(オン)と切れている時間(オフ)で動きが激変。排泄・入浴・移動はオンの時間に合わせて計画する。
オフのときは無理せず、ベッド上で安静に。本人の「効いてる時間帯」を把握しておく。
パーキンソン病は薬が効いてる時間(オン)と切れた時間(オフ)で全然違う人みたいになります。動けるときに動けないことをやらせようとしても無理。
トイレ・お風呂・移動はオンの時間に合わせる。オフのときは無理させずベッドで休んでもらう。「この人は朝の何時頃が一番動けるか」を観察して把握しておくのが大事。
PSPは「自分が転びやすい」という自覚に乏しいことも。立ち上がろうとして急に倒れる。
・立ち上がり時は必ず付き添う
・椅子は背もたれ・肘掛けありを使う
・後方にクッション・パッドを置く
・床は柔らかい素材に
・夜間も含めてセンサーマット等で起き上がりを察知
PSPの人は、自分が転びやすいことをあまり自覚してないことも多いです。「ちょっとトイレ」と言って急に立ち上がって、そのままバタン...というパターン。
・立ち上がるときは絶対そばにいる
・椅子は背もたれ・肘掛けつきを選ぶ
・後ろにクッションやパッドを置いておく
・床は柔らかい素材にして、当たっても怪我しにくく
・夜間もセンサーマットで「起き上がりそう」を事前にキャッチする
段差解消、手すり設置(廊下・トイレ・浴室)、滑り止めマット、夜間照明、ベッド柵、福祉用具の活用(歩行器・車いす)。
頻尿・便秘が多い。トイレまでの動線を最短に。ポータブルトイレの早期導入。便秘対策(水分・食物繊維・腹部マッサージ)。
長期戦のため家族の介護負担が大きい。レスパイト(ショートステイ)、デイサービス、訪問介護の活用を提案。難病指定の場合は医療費助成もあり。
「動かないと余計に動けなくなる」。PT・OT・STと連携した継続的リハビリ。発語訓練・嚥下訓練・歩行訓練・姿勢訓練。
段差をなくす、手すりをつける(廊下・トイレ・お風呂)、滑り止めマット、夜の照明、ベッドの柵、歩行器や車いすの導入。
頻尿と便秘の両方に悩まされます。トイレまでの距離はとにかく短く。ポータブルトイレを早めに置くのが鍵。便秘には水・食物繊維・お腹のマッサージ。
長期戦だから、家族はじわじわ疲弊します。ショートステイで休む時間を作ったり、デイサービス・訪問介護をどんどん使う。難病指定なら医療費の助成も使えます。
使わない筋肉はあっという間に衰える。PT・OT・STさんと連携して、少しでもいいから動く習慣を続ける。話す練習・飲み込む練習・歩く練習・姿勢の練習。
・介護保険(特定疾病として40歳から利用可)
・指定難病医療費助成(PSP・CBDは指定難病。PDも重症度Ⅲ以上なら対象)
・身体障害者手帳(症状により取得可)
・障害年金(就労困難な場合)
・介護保険:特定疾病だから40歳から使えます
・難病の医療費助成:PSP・CBDは難病指定。PDも重症度3以上ならOK
・身体障害者手帳:症状の重さで取得できます
・障害年金:仕事が難しくなったら申請可能
パーキンソン病・PSP・CBDは介護保険上、まとめて1つの特定疾病。40〜64歳でも介護保険が使える16疾病のひとつです。
表情が乏しい・声が小さい・反応が遅い——でも本人はちゃんと感じ、考えている。返事を急かさず、人としての尊厳を守った関わりを。
命に関わる転倒・誤嚥性肺炎を防ぐこと。そしてパーキンソン病なら薬の時間を守ること。この3つを押さえれば日常ケアの軸ができます。
パーキンソン病・PSP・CBDは似てて区別が難しいから、介護保険ではまとめて1つの病気扱い。40代でも介護保険が使えます。
顔が無表情でも、声が小さくても、反応が遅くても、その人はちゃんと感じて考えています。「どうせわからない」と決めつけない。せかさない。一人の人として向き合う。
命に関わるのは転倒と誤嚥性肺炎。パーキンソン病なら薬の時間を守る。この3つさえ押さえれば、日々のケアの土台ができます。
動きの病気は「心の病気」ではありません。
体は思うように動かなくても、心はそこにあります。
あなたの「ちょっと待つ」「先回りで支える」が、その人の尊厳を守ります。
女神アテナ