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こころとからだのしくみⅠ・第1章 Lesson 4
05

排泄に関連するこころとからだのしくみ

「出す」は、その人の尊厳そのもの

排泄の意義から、尿の生成(腎臓→尿細管)と排尿のしくみ、消化器と排便のしくみ、尿失禁の種類、便秘の種類までを、国試で答えられる形に整理。泌尿器と消化器の部位名称・数値を押さえます。

「おむつにしてもらったら?」——その一言が、人の心をどれだけ削るか。排泄は"体の話"であると同時に、いちばん"心の話"。だから、しくみを正確に知ることが優しさになるページです。

アテナ様の導き

排泄とは、生命維持に必要なものを取り入れたあと、不要になった物質や有害物質を体外へ出すこと。水分バランス・電解質バランスを保ち、身体内部の重要な情報源にもなります。同時に排泄は羞恥心を生じやすく、自尊感情や自立心に深くかかわる、心理的・社会的にもとても大切な営みです。尿は腎臓でつくられ膀胱にたまり、便は大腸で形をなし直腸から出る——このしくみと、そこに宿る尊厳の両方を、丁寧に見ていきましょう。それが、その人らしい排泄を支える手のはじまりですわ。

アテナ様の導き(本音モード)

現場でいちばん気をつけたいのが、排泄の話を「事務的に」扱わないこと。尿量や便の性状は体調の生きた情報で、色・量・臭い・回数の変化は「からだからの手紙」です。でも同時に、トイレの失敗ほど本人が傷つくものはない。だから「間に合わせる」より「間に合うように支える」。尿失禁ひとつとっても、原因が違えば対応がまるで違います。しくみを正確に知ることは、その人の恥ずかしさを最小にする技術。暗記じゃなく、優しさのための知識ですよ。

1枚でつかむ:排泄のしくみ
意義 → 尿をつくる → 尿を出す → 便をつくる → 便を出す
1

排泄の意義

不要物・有害物質を出し、水分・電解質バランスを維持。排泄物は体内の情報源。心理・社会的にも重要。

2

尿をつくる(腎臓)

血液を糸球体でろ過して原尿に。尿細管で必要な物質の約99%を再吸収し、残り1%が尿。

3

尿を出す(排尿)

膀胱に150〜200mLたまると尿意。大脳の指示で外尿道括約筋がゆるみ、尿道から排出。

4

便をつくる(大腸)

大腸を通る間に水分が吸収され便が形をなす。食後約24〜72時間で肛門から排泄。

5

便を出す(排便)

直腸に便が届き直腸内圧が上がると便意。排便姿勢+いきみで外肛門括約筋がゆるみ排出。

1. 排泄の意義と排泄行動のプロセス
なぜ排泄が大切か/排泄には多くの機能が必要

人は生命維持に必要な物質・栄養素を取り入れ、不要になった物質や有害物質を体外へ排出します。排泄物は身体内部の重要な情報を含み、排泄が順調でないことは心身になんらかの障害があるサインです。排泄には生理的な意義(不要物の排出・水分/電解質バランスの維持・情報源)と心理的・社会的な意義(快・不快が自尊感情や自立心に影響し、羞恥心を生じやすく社会参加意欲にもかかわる)があります。

排泄って、ただ「出す」だけの動作に見えて、じつは認知・移動・巧緻性・筋力・姿勢保持がぜんぶ噛み合って初めて成立する、超・総合作業なんです。尿意を感じる→トイレを認識する→歩いて移動する→ズボンを下ろす→便器に座る→出す→拭く→衣服を整えて戻る。この長い連鎖のどこか1つでも崩れると「排泄が困難」になる。だから「失敗=本人のせい」じゃない。どの段階でつまずいているかを見極めるのが、私たちの仕事です。

● 排泄行動に必要な機能(プロセス)

① 尿意・便意の知覚

膀胱に150〜200mLで尿意。直腸に便がたまり直腸内圧が上がると便意。

② 認知・移動

トイレの場所を認識し、我慢しながら移動、ドアを開閉できる。

③ 巧緻性・下肢筋力

便器の使い方を認識、衣類を下ろし、座る/しゃがむ・立ち上がれる。

排泄行動は感覚・意識・動作の連鎖。1つでも不具合があると排泄が困難になる。どの段階でつまずくかを見極めるのが支援の起点。

尿
2. 尿の生成と排尿のしくみ
泌尿器の器官/腎臓でつくり膀胱から出す

尿は腎臓で血液からつくられます。血液が腎臓に流れ込むと糸球体で老廃物・有害物質・余分な水がろ過されて原尿ができ、原尿は尿細管という細い管を流れます。その間にアミノ酸・ブドウ糖・水・ナトリウムなどの必要な物質を選び出し、その約99%を再吸収。最終的に残り1%が、不要な老廃物を含んだ尿として体外へ排出されます。

● 泌尿器の器官と働き(部位名称)

器官働きポイント
腎臓血液をろ過して尿をつくる。糸球体でろ過→尿細管で再吸収左右に1対。必要な物質の約99%を再吸収
尿管腎臓でつくられた尿を膀胱へ運ぶ細い管左右で2本。尿は一方向に流れる
膀胱尿を一時的にためる袋。壁が伸びて蓄尿する蓄尿は200〜500mL可能。150〜200mLで尿意
尿道膀胱の尿を体外へ導く管。出口に外尿道括約筋括約筋の収縮=排尿を抑制/弛緩=排尿

排尿のしくみ:膀胱に尿がたまり膀胱壁が拡張すると、その刺激が中枢神経に伝わり尿意となります(通常150〜200mL程度)。排尿してよいかを大脳が判断し、不適切な場面では交感神経がはたらいて外尿道括約筋を収縮させ排尿を抑制。大脳から「出してよい」の指示が出ると副交感神経が優位になり、外尿道括約筋がゆるんで尿は尿道から出ていきます。加齢で膀胱の萎縮や括約筋の筋力低下が起こると、蓄尿量は減少します。

腎臓 腎臓 (血液をろ過→尿をつくる) 左右に1対 尿管 尿管 (尿を膀胱へ運ぶ) 膀胱 150〜200mLで尿意/蓄尿200〜500mL 尿道 (外尿道括約筋)

尿の通り道は 腎臓 → 尿管 → 膀胱 → 尿道。腎臓が血液をろ過して尿をつくり、尿管が膀胱へ運び、膀胱にためて、尿道から出す。出口の外尿道括約筋が「がまん(収縮)」と「排尿(弛緩)」を切り替える。

● 尿の性状(正常と異常)

項目正常異常の例
1,000〜1,500mL/日乏尿:400mL以下/日、多尿:2,500〜3,000mL以上/日
回数4〜8回/日頻尿:昼間8回以上/夜間1回以上
淡黄色〜淡黄褐色赤色〜黒褐色(血尿など)
混濁・臭い混濁なし・一種の芳香性臭気血球・細菌などで混濁、強いアンモニア臭・甘酸っぱい臭いなど
便
3. 便の生成と排便のしくみ
消化器の通り道/大腸で形をなし直腸から出す

口から入った食物は咽頭→食道→胃→小腸→大腸→直腸を通りながら消化・吸収され、残ったものが便になり、通常は食後約24〜72時間で肛門から排泄されます。大腸は小腸に続く長さ約1.5〜1.8mの管状の臓器で、盲腸・結腸・直腸から構成されます。結腸は上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸に分かれ、便はS状結腸を通る間に普通便の硬さになり、直腸へ送られます。便の量は健康な人で1回150〜200g程度、水分は65〜75%含まれます。

● 大腸の区分と食物残渣の移送時間

部位・段階便の状態目安の時間
上行結腸あたり液状4〜6時間
上行結腸半流動状6〜7時間
横行結腸粥状約8時間
横行結腸〜下行結腸半粥状約9時間
下行結腸半固形状約12時間
S状結腸固形状12〜15時間
排便24〜72時間

排便のしくみ:腸のはたらきは自律神経が調節します。ふだん便をもらさずにいられるのは、交感神経が優位で直腸をゆるめ、内肛門括約筋・外肛門括約筋を収縮させているから(蓄便)。便が移動して直腸内圧が40〜50mmHg以上になると、刺激が骨盤神経から仙髄の排便中枢へ、さらに大脳皮質へ伝わり便意を意識します。副交感神経が刺激されると内肛門括約筋が反射的にゆるみ、外肛門括約筋は収縮を保ったまま。トイレで排便姿勢がとれると、いきみをきっかけに外肛門括約筋がゆるみ、直腸が収縮して便が排出されます。

内肛門括約筋=不随意(自律神経・反射)/外肛門括約筋=随意。この「自分で我慢できる/できない」の違いが排便コントロールのカギ。

4. 尿失禁の種類と便秘の種類
頻出:原因で対応が変わる分類

尿失禁とは、自分の意思とは関係なく尿がもれてしまう状態のこと。原因によって主に次の種類に分けられ、それぞれ対応が異なります。種類の取り違えは国試頻出なので、「どんなときにもれるか」「なぜもれるか」をセットで押さえましょう。

ここが本章いちばんの引っかけポイント。「もれる」という結果は同じでも、咳でちょっともれる(腹圧性)と、間に合わずどっともれる(切迫性)は原因も対応もまるで別物。トイレまでの動線を短くすれば済む人(機能性)に、薬や体操をすすめても的外れ。「なぜもれたのか」を見極めることが、その人の恥ずかしさを減らす最短ルートです。

種類どんなときにもれる/原因関連しやすい状況
腹圧性尿失禁咳・くしゃみ・重い物を持つなど腹圧が急にかかったときにもれる。骨盤底筋のゆるみが背景出産経験のある女性・加齢に多い
切迫性尿失禁急に強い尿意(尿意切迫感)が起こり、トイレまで我慢できずもれる過活動膀胱・脳血管障害など
溢流(いつりゅう)性尿失禁尿が出せず膀胱にたまりすぎ、あふれるように少しずつもれる(残尿が多い)前立腺肥大など尿路の通過障害
機能性尿失禁膀胱・尿道は正常だが、認知機能や移動・動作の障害で間に合わずもれる認知症・歩行障害・手指の巧緻性低下
反射性尿失禁尿意を感じないまま、膀胱が反射的に収縮してもれる脊髄損傷など

● 便秘の種類

機能性便秘

  • 弛緩性:大腸のぜん動運動の低下。高齢者・運動不足・食物繊維や水分の不足に多い
  • けいれん性:腸が過度に緊張。ストレスなどが背景。ころころ便になりやすい
  • 直腸性:便意の我慢を繰り返し、直腸に便がきても便意が起こりにくくなる

器質性便秘

腸の形や通り道そのものに問題がある便秘。腫瘍・炎症・腸の狭窄などが原因で便が通りにくくなる。

※急な便秘や強い腹痛・出血を伴う場合は器質性を疑い、医療職に連絡する。

便の量を左右する因子:食事量・食物繊維(セルロース)・調理法(硬い/軟らかい)・消化吸収力・水分摂取量・大腸内停滞時間。水分と食物繊維の不足・停滞時間の延長は、便を硬く・少なくする

WORD:蓄尿・残尿・排尿反射
国試で問われる用語

蓄尿(ちくにょう)…膀胱に尿をためること。膀胱は200〜500mLの蓄尿が可能で、外尿道括約筋の収縮でもれないよう保たれる。
残尿(ざんにょう)…排尿後も膀胱に残ってしまう尿。多いと溢流性尿失禁や尿路感染の原因になる。
排尿反射…膀胱にたまった尿の刺激が中枢に伝わり、副交感神経が優位になって膀胱が収縮・外尿道括約筋がゆるみ排尿に至る一連の反射。ふだんは大脳がこれを抑制し、適切な場面で「出してよい」と許可を出している。

試験に出るところ
本音でまとめる
理解度チェック
押すと答えが出ます

Q1. 尿の生成に関する記述で、最も適切なものはどれ?

正解はB。尿は腎臓でつくられ、糸球体でろ過されてできた原尿は尿細管を流れる間に必要な物質の約99%が再吸収され、残り約1%が尿として排出されます。Aは「膀胱」が誤り(膀胱は尿をためる袋)。Cも誤りで、原尿の大部分は再吸収されます。

Q2. 尿失禁の種類とその特徴の組み合わせで、適切なものはどれ?

正解はA。腹圧性は咳・くしゃみ・重い物を持つなど腹圧がかかったときにもれるタイプです。Bは反射性の説明(切迫性は"急に強い尿意が起きて我慢できずもれる")。Cは溢流性の説明(機能性は膀胱・尿道は正常だが、認知や移動・動作の障害で間に合わずもれるタイプ)。種類の取り違えは頻出なので、"もれ方"と原因をセットで覚えましょう。

Q3. 排便のしくみに関する記述で、適切なものはどれ?

正解はB。直腸に便が送られて直腸内圧が高まると、刺激が骨盤神経から仙髄の排便中枢を経て大脳皮質へ伝わり、便意を意識します。Aは誤りで、内肛門括約筋は不随意(自律神経支配で反射的にゆるむ)、自分の意思で調整できるのは外肛門括約筋です。Cも誤りで、便は通常食後約24〜72時間で排泄されます。
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