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こころとからだのしくみⅠ・第1章 Lesson 1(歩行・移乗編)
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移動・移乗に関連するこころとからだのしくみ ②

「立つ・歩く・乗り移る」を、腰を壊さず支える技術

寝返り・起き上がり・立ち上がりの重心と支持基底面積の変化から、歩行のしくみ(立脚期・遊脚期)、車いすの座位と構造、そして介助の要となるボディメカニクスの8原則までを、国試で答えられる形に整理。

「持ち上げる」んじゃなくて「重心を動かす」。力任せは利用者の苦痛と、あなたの腰痛の始まりです。体の理屈で支える回。

アテナ様の導き

前編で学んだ重心と支持基底面積の理(ことわり)は、ここから実際の介助動作へと姿を変えます。寝返り、起き上がり、立ち上がり——どの動作にも、支持基底面積と重心をどう動かすかという共通の理屈が流れています。そして歩行は、支える面を次々につくり出しながら進む、じつは不安定な動き。だからこそ介助者は、自分のからだの使い方=ボディメカニクスを味方につけるのです。力ではなく、理(ことわり)で支える。それが、相手とあなた自身の腰を守る道ですわ。

アテナ様の導き(本音モード)

移乗介助で腰を痛める介護職、本当に多いんです。原因はたいてい「持ち上げよう」とすること。人間は重い。数十kgを腕力で持ち上げれば腰は壊れます。でも体の理屈——足を開いて重心を低く、相手を手前に引き、大きな筋肉を使う——を守れば、驚くほど軽く動く。ボディメカニクスの8原則は、暗記のための呪文じゃなくて、10年20年その仕事を続けるための護身術です。相手にも優しい。まさに一石二鳥ですよ。

1枚でつかむ:動作介助の流れ
寝返り → 起き上がり → 立ち上がり → 歩行 → ボディメカニクス
1

寝返り(仰臥位→側臥位)

腕を組み膝を曲げて支持基底面積を狭くし、重心を左右へ移動。少ない力で向きを変える。

2

起き上がり(側臥位→座位)

側臥位から肘の力と反射を使う。仰臥位からは腹筋が要るため、介助では側臥位からが一般的。

3

立ち上がり(座位→立位)

支持基底面積が狭くなり重心は前方へ。前傾で重心を足底に乗せ、大腿四頭筋で立つ。

4

歩行

立位を保ちながら下肢を交互に振り出す周期運動立脚期遊脚期が左右交互に。

5

ボディメカニクス

介助者のからだの使い方の8原則。足を広げ・重心を低く・相手を手前に引く。腰を守る技術。

1. 寝返り・起き上がりのしくみ
体位変換の重心移動/なぜ側臥位から起こすのか

寝返り(仰臥位→側臥位)では、①支持基底面積が広く重心がからだの中央にあって安定した状態から、②腕を組み膝を曲げて支持基底面積を狭くし、重心を左右へ移動させ、③支持基底面積が横向きの側面へ移って再び安定する、という流れで向きが変わります。からだをコンパクトにまとめると、少ない力で動かせます。

寝返りのコツは「相手を小さくまとめる」こと。腕を胸の前で組んで、膝を立てる。これだけで転がしやすくなります。大の字のまま向きを変えようとすると、支える面が広くて全然動かない。逆に、動かす瞬間だけ支持基底面積をわざと狭くする——ここが体の理屈です。ちなみに起き上がりは、力任せに首や腕を引っ張らないこと。相手の肘の力を引き出すのが基本です。

起き上がり(側臥位→座位)では、側臥位の状態で肘を曲げて頭を上げ、上肢の力と反射を利用します。腕を横に広げると支持基底面積が広がり、圧中心点が常にその中に収まるため動作がしやすくなります。ベッドから起き上がる際はベッドの外に両足を出すと下肢の力を利用できます。仰臥位から起き上がる方法もありますが、重心移動に腹筋の力が必要となるため、起き上がり介助の際は側臥位からおこなうのが一般的です。

2. 立ち上がりのしくみ
座位→立位の重心移動/抗重力筋・大腿四頭筋

立ち上がり動作は、ベッドから車いすへの移乗、着替え、トイレでのズボンの上げ下ろしなど、さまざまな場面で必要になります。座位から立位になるとき、支持基底面積が狭くなり、重心は前方へ移動します。重心が支持基底面積から外れるとバランスを崩すため、安定した立位を保つには抗重力筋(重力に抗ってはたらく筋肉)が必要です。介助は上体を前傾させ、からだをのばす動作を伴うので、正しい重心移動を理解したうえでおこないます。

立ち上がり介助の鉄則——絶対に持ち上げない、引っ張らない。力任せに引き上げると、利用者に不安と苦痛を与えるだけでなく、介護職の腰痛の原因になります。正しくは、①浅く腰かけてもらい足を開く、②お辞儀するように上体を前に倒して重心を足の裏へ移す、③お尻が浮いたら膝を伸ばす方向へ。「立って」じゃなく「おへそを前に、頭を下げて」の声かけが効きます。使う筋肉は太ももの前=大腿四頭筋。相手の力を引き出して、足りない分だけ補うのが介助です。

● 立ち上がり動作の5ステップ(重心と支持基底面積の変化)

段階動作重心・支持基底面積の変化
①座位の確認両足を開いて支持基底面積を広くとり、浅めに腰かける支持基底面積は広く、重心(圧中心点)は臀部と足底の間で安定
②足を引く両足を引いて圧中心点に近づけ、上体を前に傾ける前傾で重心が前方(足底)へ移動していく
③臀部を浮かす足底に圧中心点がある状態のまま臀部を浮かせる支持基底面積が小さくなりバランスを崩しやすい局面
④立ち上がる上体を起こし、膝を伸ばして重心を上へ引き上げる使うのは太ももの前側の大腿四頭筋
⑤立位の完成安定した立位姿勢をとる利用者の力を使いながら、足りない筋力を補う

大腿四頭筋は歩行・立ち座りに不可欠な筋肉で、弱くなると日常生活に支障をきたす。介助では利用者の力を引き出し、力任せに持ち上げたり引っ張ったりしない(不安・苦痛と、介護職の腰痛の原因になる)。

3. 歩行のしくみ
周期運動/立脚期と遊脚期/高齢者・疾病の歩行

歩行は、立位姿勢を保ちながら両側の下肢を交互に軸足にしつつ、反対側の下肢を前に振り出す動作です。体幹や下肢の筋力で体重を支え、感覚器官からの情報をもとに制御中枢が筋力をコントロールしてバランスを保ちます。歩行は重心の位置が高いうえに、からだを支持する面を次々つくり出していく動きなので、じつは不安定になりやすい状態です。

一方の足を出してかかとが接地し、他方の足を出してかかとが接地し、最初に出した足のかかとが再び地面につくまでを1周期とする周期運動です。足が地面に接している時間を立脚期(りっきゃくき)、離れている時間を遊脚期(ゆうきゃくき)といい、この2つは左右の足で交互に起こります。歩くとき重心は前と横に移動するため、バランスを保つには圧中心点を常に支持基底面(支持基底面積)の中に収める必要があります。

● 歩行周期の2つの相/高齢者・疾病による歩行の違い

区分内容ポイント
立脚期足が地面に接している時間(体重を支える相)立脚期と遊脚期は左右の足で交互に起こる
遊脚期足が地面から離れている時間(足を前へ運ぶ相)
高齢者の歩行背中・腰が曲がり、股・膝・足関節が曲がりがち歩幅が小さい(若年者は歩幅が大きい)
円背(えんぱい)背中・腰が大きく曲がり固まった状態。重心が前方へ足先が上がらずつまずきやすい
片麻痺脳卒中などで麻痺側の下肢を大きく振り回して前に出す足先から接地し、麻痺側の骨盤が上がる。長く続くと腰の歪み・痛み

麻痺や痛みがあると圧中心点が健常な足へ偏り、正しい重心移動が難しくなる。歩行介助の前に、まず重心移動(体重移動)の練習をする必要がある。杖を使う三動作歩行は「①杖を一歩前につく→②患側(患足)の足を前に出す→③健側の足を患側にそろえる」の順。

4. 車いすを動かすためのからだのしくみ
理想の座位姿勢/車いすの各部名称

車いすは、座位姿勢で上肢や下肢の力を駆動力として利用し移動するものです。自力で駆動するには、安定した座位を保持し、駆動のための筋力と関節の動きが必要です。車いす上での理想的な座位姿勢は、耳・肩・骨盤を結ぶ線が一直線になっている状態。この姿勢は疲労が少なく、手やからだを動かしやすくなります。安定した座位が保てないときは、クッション・バックサポート・ベルトなどで姿勢を安定させます。

車いすで見落とされがちなのが「ずり落ち姿勢」。背もたれに寄りかかってお尻が前に滑った状態を放置すると、疲れるし褥瘡(じょくそう)もできやすい。理想は耳・肩・骨盤が縦一直線。そして長時間同じ姿勢は褥瘡のもと。定期的に姿勢を変えて重心の位置をずらし、圧迫を取り除くこと。部品名も現場で普通に飛び交います(「フットサポート上げて」等)。名称は下表で押さえておきましょう。

● 車いすの主な各部名称

操作・支持

  • グリップ(介助者が押す手元)
  • ハンドリム(自分で駆動する輪)
  • ブレーキ

座る部分

  • シート(座面)
  • バックサポート(背もたれ)
  • アームサポート(肘置き)

足まわり

  • レッグサポート/フットサポート
  • キャスター(前の小さな車輪)
  • 駆動輪(後ろの大きな車輪)

その他

  • スカートガード
  • クロスバー(折りたたみ部)
5. ボディメカニクスの8原則
介助者のからだの使い方/移乗介助の基本

ボディメカニクスとは、骨・関節・筋肉などの力学的な相互関係を活用し、少ない力で安全に介助する技術です。移乗介助の基本であり、利用者の負担を減らすと同時に、介護職自身の腰痛予防にもなります。次の8つの原則を、一つひとつ意味とセットで覚えましょう。

原則内容なぜ効くか
①支持基底面積を広くとる介助者は足を前後・左右に開いて立つ自分が安定し、ふらつかず力を出せる
②重心を低くする膝を曲げて腰を落とす重心が下がるほど姿勢が安定する
③重心移動をスムーズにする持ち上げず、自分の重心移動で相手を動かす力ではなく体の流れで動かせる
④重心を近付ける利用者にできるだけ近づいて介助するてこの腕が短くなり腰への負担が減る
⑤てこの原理を活用する支点・力点・作用点を意識して動かす小さな力で大きく動かせる
⑥からだを小さくまとめる利用者の腕を組み膝を曲げてコンパクトに支持基底面積が狭まり動かしやすい
⑦大きな筋群を使う腕だけでなく脚・体幹など大きな筋肉を使う局所(腰・腕)に負担が集中しない
⑧利用者を手前に引く押すのではなく、自分の方へ引き寄せる引く動作のほうが力が伝わり安全
✕ 悪い例:足を閉じ膝を伸ばす ! 支持基底面積が狭く腰に集中 ○ 良い例:足を開き膝を曲げる 重心を低く 支持基底面積を広く 手前に引く

左=足を閉じ膝を伸ばしたまま前かがみで持ち上げると、腰に負担が集中。右=足を前後・左右に開いて支持基底面積を広げ、膝を曲げて重心を低くし、相手を手前に引く。同じ介助でも、からだの使い方で負担は大きく変わる。

WORD:ボディメカニクス
国試で問われる用語

骨・関節・筋肉などの力学的な相互関係を活用し、最小限の力で安全に介助する技術のこと。①支持基底面積を広く、②重心を低く、③重心移動をスムーズに、④重心を近付け、⑤てこの原理を使い、⑥からだを小さくまとめ、⑦大きな筋群を使い、⑧利用者を手前に引く——の8原則で示される。利用者の負担軽減と介護職の腰痛予防を同時にかなえる、移乗介助の土台となる考え方。

試験に出るところ
本音でまとめる
理解度チェック
押すと答えが出ます

Q1. 歩行に関する記述として、最も適切なものはどれ?

正解はB。足が地面に接している相が立脚期、離れている相が遊脚期で、これらは左右の足で交互に起こります。Aは名称が逆、Cは「同時」が誤り(交互に起こる)です。

Q2. 立ち上がり介助に関する記述で、適切なものはどれ?

正解はC。座位→立位では支持基底面積が狭くなり重心は前方(前傾で足底)へ移動します。だからAは「後方」が誤り。Bの力任せの持ち上げは、利用者に苦痛を与え介護職の腰痛の原因にもなり不適切。利用者の力を引き出して補うのが基本です。

Q3. ボディメカニクスの原則として、適切でないものはどれ?

正解はC(適切でないもの)。ボディメカニクスでは利用者のからだを小さくまとめる(腕を組み膝を曲げる)ことで支持基底面積を狭め、動かしやすくします。Cは逆です。AとBは8原則どおり正しい記述です。
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