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こころとからだのしくみⅠ・第1章 Lesson 2
03

食事に関連するこころとからだのしくみ

「食べる」は、いちばん身近で、いちばん命に近い

食事の意義から、摂食・嚥下の5期(先行期→準備期→口腔期→咽頭期→食道期)、消化器系のしくみ、そして介護現場で最重要の「誤嚥」と代償的な栄養摂取法までを、国試で答えられる形に整理。

「むせずに、安全に、最後まで口から」——現場でいちばん神経を使うのが食事介助。なぜ誤嚥が起こるのか、そのしくみから丁寧に押さえます。

アテナ様の導き

食事は、エネルギーのもとになる栄養素を摂り、生命を維持する行為です。けれどそれだけではありません。おいしいものを食べる喜び、食卓を囲む会話、行事食に宿る文化——食事はこころを満たし、人と人をつなぐ営みでもあるのです。飲み込む動作は、先行期・準備期・口腔期・咽頭期・食道期という摂食・嚥下の5期を経ています。この一連の流れを知ることが、食べる喜びを守り、そして誤嚥という危険を防ぐ技術のはじまりですわ。

アテナ様の導き(本音モード)

食事介助でいちばん怖いのが誤嚥(ごえん)——食べ物や唾液が気管に入ってしまうことです。とくに高齢の方では、これが誤嚥性肺炎につながって命にかかわる。だから「早く食べさせよう」と急がせるのは絶対にダメ。飲み込みには「ゴクン」と気管にフタをする一瞬(嚥下反射)があって、そこが上手くいかないとむせる。5期のどこでつまずいているのかが読めると、姿勢の直し方も、とろみのつけ方も変わってきます。暗記じゃなく、目の前の人の「安全に食べる」を守るための知識ですよ。

1枚でつかむ:摂食・嚥下の5期
先行期 → 準備期 → 口腔期 → 咽頭期 → 食道期
1

先行期(認知期)

食べ物を目・鼻で認識する時期。形・色・匂いを過去の食体験と照らし合わせ、条件反射で唾液が分泌され食べる準備が整う。

2

準備期(咀嚼期)

口に取り込み(捕食)、歯でかみ砕き唾液と混ぜて飲み込みやすい塊=食塊(しょっかい)をつくる時期(食塊形成)。

3

口腔期

食塊を口腔から咽頭へ送り込む時期。舌の先を口蓋に押し当て、舌の動きで食塊を後ろへ送る。舌の力が要になる。

4

咽頭期

食塊が咽頭を通過する時期。軟口蓋が鼻腔を閉じ、喉頭蓋が下降して気管にフタをする一連の運動=嚥下反射で、食道の入り口が開く。

5

食道期

食塊が食道から胃へ送られる時期。蠕動(ぜんどう)運動・重力・腹腔内圧で移送。食道下部の下部食道括約筋が胃からの逆流を防ぐ。

口腔期・咽頭期・食道期の3つは「嚥下3期」とよばれる嚥下運動そのもの。この段階に食塊が気管へそれると「誤嚥」になる。

1. なぜ食事をするのか
食事の意義/栄養素とエネルギー

食事は第一に生命の維持——体内に取り込まれた食物はエネルギーに変換され、体温維持・代謝・内臓機能の調節をおこない、骨・筋肉・血液をつくります。さらに、規則正しい食事は健康維持に、満たされる感覚は精神的安定に、食卓の会話は人・社会とのつながりに、行事食は伝統・文化の継承に、作法はマナーの習得につながります。食事は生命維持の行為であると同時に、暮らしに彩りを与えるものです。

教科書的には「①生命維持 ②健康維持 ③精神的安定 ④人・社会とのつながり ⑤伝統行事・儀式 ⑥作法・マナー」の6つ。丸暗記より、「栄養」と「楽しみ」の両方の意味があると押さえると忘れません。現場でも、栄養が足りていても「一人で味気なく食べる」のと「誰かと笑って食べる」のとでは食欲がまるで違う。食事は栄養補給じゃなく、その人の一日の楽しみ。だから「食べさせる」じゃなく「食べていただく」場をつくるのが介護です。

● 栄養素とエネルギー

三大栄養素

炭水化物・脂質・たんぱく質。おもに体内のエネルギー源・構成成分になる。

五大栄養素

三大栄養素+無機質(ミネラル)・ビタミン。ビタミン・無機質はからだの機能を調節する。

基礎代謝/消費エネルギー

生命活動に必要な最低限=基礎代謝。これに活動代謝を加えたものが消費エネルギー

摂取エネルギー>消費エネルギーだと脂肪が蓄積し体重増加、逆だと体重減少。バランスが大切。年齢・性別・活動量に応じた目安を推定エネルギー必要量という。

2. 食事に関連したこころのしくみ
食欲を調整するしくみ/おいしさ・感情と食欲

食欲は人間の基本的欲求の一つで、間脳の視床下部にある摂食中枢満腹中枢でコントロールされています。食事で糖分がブドウ糖に分解され血糖値が上昇すると満腹中枢がはたらき食欲が抑えられ、血糖値が低下すると摂食中枢が反応して空腹を感じます。血糖値の上昇が満腹中枢に伝わるまでには約15〜20分かかるといわれ、早食いは食べすぎのもとになります。

食欲は血糖値だけでなく、胃の収縮運動(胃が満たされ胃壁が伸展→満腹感)、体温(体温低下で食欲増進/上昇で減退)、咀嚼(よくかむと満腹中枢が刺激され食欲を抑える)にも左右されます。さらに、見た目・匂い・音などの五感や、過去の食体験・食環境・感情も食欲に影響します。心配事やストレスがあると食欲が湧かなかったり、逆にやけ食いをしたりするのは、気持ちの動きが食事に大きく響くためです。

摂食中枢=空腹を感じる/満腹中枢=満腹を感じる。血糖値・胃の収縮・体温・咀嚼がシグナルになる、と役割で覚える。

3. 摂食・嚥下の5期と消化器系
飲み込みの流れ/消化器官の名称と働き

食事の動作は先行期(認知期)・準備期(咀嚼期)・口腔期・咽頭期・食道期の5段階に分けられ、これを摂食・嚥下の5期とよびます。とくに口腔期・咽頭期・食道期の3つは「嚥下3期」とよばれ、嚥下運動そのものを示します。飲み込みの中心となる嚥下反射は、延髄の嚥下中枢によってコントロールされています。各期のどこに問題があるかで、必要な支援(姿勢・食事形態・とろみ)が変わります。

時期おこなわれることつまずくと(国試ポイント)
先行期
(認知期)
視覚・嗅覚で食物を認識。過去の食体験と照合し、条件反射で唾液が分泌される認知機能の低下や集中できない環境だと、食べる準備が整わない
準備期
(咀嚼期)
口に取り込み(捕食)、かみ砕き唾液と混ぜて食塊を形成する歯の欠損・舌の機能低下で、十分に咀嚼されないまま飲み込むことに
口腔期舌の先を口蓋につけ、食塊を口腔から咽頭へ送り込む舌の力・送り込む力が低下していると咽頭の奥まで送れない
咽頭期軟口蓋が鼻腔を閉じ、喉頭蓋が下降して気管を閉鎖(=嚥下反射)。食道の入り口が開くタイミングがずれると食塊が気管へ入り誤嚥。頸部をやや前屈させると誤嚥しにくい
食道期蠕動運動・重力・腹腔内圧で食塊を胃へ移送。下部食道括約筋が逆流を防ぐ下部食道括約筋の働きが弱いと、胃からの逆流が起こりやすい

● 消化器系の器官(口から肛門まで)

消化管の並び

  • 口腔 → 咽頭 → 食道 → 胃
  • 小腸(十二指腸・空腸・回腸)
  • 大腸(盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸)→ 肛門

消化器系のはたらき

食物中の栄養素を分解(消化)し、おもに小腸の粘膜から吸収して血液やリンパ液へ送り、残った食物残渣を排泄する。

咽頭は「食べ物の道」と「空気の道」が交わる場所。だから嚥下のとき、気管にフタ(喉頭蓋の下降)をして食道側だけを開く精密な連携が必要になる。

4. 誤嚥のしくみと食事形態の工夫
なぜ気管に入るのか/形態調整で誤嚥を防ぐ

咽頭は食道(食べ物の道)と気管(空気の道)が交わる場所です。ふだんの嚥下では喉頭蓋が下降して気管にフタをし、食塊は食道側へ送られます。ところがこのタイミングがずれると、食塊が誤って気管へ入ってしまう——これが誤嚥(ごえん)です。ベッド上で食事を摂る場合、頸部(首)をやや前屈させた姿勢にすると、あごが上がらず気管への通路がふさがりやすくなり、誤嚥しにくくなります。

正常な嚥下 鼻腔(閉鎖) 軟口蓋 食塊 喉頭蓋が フタをする 気管 食道 誤嚥(ごえん) フタが 間に合わない 気管 食道 食塊

左:正常な嚥下では、軟口蓋が鼻腔を閉じ、喉頭蓋が下降して気管にフタをするため、食塊は食道へ進む。右:フタが間に合わないと食塊が気管へ入ってしまう=誤嚥。頸部をやや前屈させた姿勢は、この気管への通路をふさぎやすくして誤嚥を防ぐ。

咀嚼機能や嚥下機能が低下している場合は、その能力に合わせて食事形態を調整します。適切な形態を選ぶことで誤嚥を防ぎ、食事への意欲を高めることができます。

● 主な食事形態

きざみ食

食物を小さく刻んだもの。かみ砕く手間が少ない。ただし唾液が少ないとむせやすい点に注意。

軟菜食

舌でつぶせるくらいまで軟らかくしたもの。咀嚼・嚥下機能が低下している場合に。

ミキサー食

ミキサーで液体状にしたもの。食塊形成ができない場合に。とろみをつけると飲み込みやすい。

ゼリー食/流動食

ゼリー状にしたもの/液状・重湯など。流動食は栄養価が低いと低栄養の人には適さない

水やお茶などサラサラした液体はかえってむせやすいことがあり、とろみをつけて速度をゆるめると誤嚥を防ぎやすい。脱水を防ぐ水分補給と、誤嚥を防ぐ工夫は両立させる。

5. 代償的な栄養摂取法
経口が困難なとき/経管栄養・経静脈栄養

摂食・嚥下機能の障害などで口から食物を摂ること(経口摂取)が困難・不可能な場合に、必要な栄養や水分を取り入れるためにおこなうのが代償的な栄養摂取法です。大きく、消化管を使う経管栄養と、静脈から補給する経静脈栄養に分かれます。少しでも口から食べられる場合は、経口摂取と経管栄養を併用することもあります。

方法内容特徴・国試ポイント
経鼻経管栄養細い管を鼻から食道を通して胃まで挿入し栄養・水分を入れる消化・吸収能力は保たれているが口からの摂取が困難な場合に。挿入・抜去が容易だが不快感で自己抜去することがある
胃ろう内視鏡手術で腹部に穴(ろう孔)を造設し胃に直接栄養を入れる口から食べられる人は経口摂取・嚥下訓練も併用。皮膚トラブル時は速やかに医療職へ報告
腸ろう小腸(主に空腸)に穴を開け直接栄養を入れる胃を全摘出した場合などに。管が細く下痢になりやすい
経静脈栄養静脈内に管を入れ栄養・水分を補給(中心静脈栄養/末梢静脈栄養)消化管の機能に問題があり経管栄養が難しい場合に。合併症・感染症を起こしやすい

経口摂取をせず咀嚼をしない状態が続くと唾液の分泌が減り、口の中で細菌が繁殖しやすくなる。細菌を含む唾液が肺に入ると誤嚥性肺炎を起こすため、日常的な口腔ケアが欠かせない。2012年の法改正で、一定の研修を受けた介護職も一定の条件下で痰の吸引・経管栄養の一部を実施できる。

WORD:嚥下反射/不顕性誤嚥
国試で問われる用語

嚥下反射(えんげはんしゃ)とは、口腔内で形成された食塊が舌の奥へ送られてくると、軟口蓋が動いて鼻腔が閉鎖し、同時に喉頭蓋が反転して気管をふさぎ、「ゴクン」と飲み込む一連の運動のこと。このとき呼吸が一瞬止まり、口唇・軟口蓋・喉頭蓋が閉じて一定の圧が生じるため、うまく飲み込めます。嚥下反射は延髄の嚥下中枢によってコントロールされています。

不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)とは、むせ込みなどの目立った反応がないまま、少量の唾液や食物が気管に入ってしまう誤嚥のこと。むせがないぶん気づかれにくく、誤嚥性肺炎の原因になりやすいため、睡眠中も含めた口腔内の清潔保持が重要になります。

試験に出るところ
本音でまとめる
理解度チェック
押すと答えが出ます

Q1. 摂食・嚥下の5期の順序として、正しいものはどれ?

正解はB。「先行期(認知期)→準備期(咀嚼期)→口腔期→咽頭期→食道期」の順。食べ物を見て認識し(先行期)、噛んで食塊をつくり(準備期)、咽頭へ送り(口腔期)、気管にフタをして飲み込み(咽頭期)、胃へ送る(食道期)という流れです。

Q2. 咽頭期における嚥下反射の説明として、適切なものはどれ?

正解はB。咽頭期では軟口蓋が挙上して鼻腔を閉じ、喉頭蓋が下降して気管を閉鎖する一連の運動(嚥下反射)により、食塊が誤って気管に入らないよう食道側へ送られます。この反射は延髄の嚥下中枢がコントロールしています。Aは呼吸の説明、Cは逆流(誤嚥ではなく胃食道逆流)で誤りです。

Q3. 誤嚥と食事支援に関する記述で、適切なものはどれ?

正解はB。咀嚼をしないと唾液の分泌が減り口腔内で細菌が繁殖しやすくなり、細菌を含む唾液が肺に入ると誤嚥性肺炎を起こします。だから口腔ケアが重要です。Aは逆で、誤嚥を防ぐには頸部を「やや前屈」させます(あごを上げると気管が開きやすい)。Cも誤りで、サラサラした液体はかえってむせやすく、必要に応じてとろみをつけます。
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