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こころとからだのしくみⅡ・人間の心理 Lesson 2
03

こころのしくみの基礎 ②(思考・感情・認知・適応)

「その言い訳」も「その八つ当たり」も、心が自分を守る手段

考える(思考)、感じる(感情・情動)、わかる(認知・知能)——脳のはたらきから、適応と適応機制(防衛機制)、ストレスとその対処までを、国試で答えられる形に整理。防衛機制の種類の見分けが最大のヤマです。

利用者の理不尽な怒りも、後戻りしたような甘えも、「防衛機制」という名前がつくと見え方が変わる。相手の心と、あなた自身の心を守るための地図です。

アテナ様の導き

人は、考え(思考)、感じ(感情・情動)、まわりの世界をわかろうとします(認知)。そして欲求と環境がうまく折り合った状態を適応と呼びます。けれど、すべての欲求が満たされる人はまれ。満たされない欲求不満(フラストレーション)に陥ったとき、心は無意識のうちに自分を守ろうとします。それが適応機制(防衛機制)ですわ。抑圧、合理化、投影、退行、昇華——名前は難しく見えますが、どれも「心の安定を取り戻すための工夫」。その一つひとつを、丁寧に見分けられるようになりましょう。

アテナ様の導き(本音モード)

現場で「あの利用者さん、急に怒りっぽくて」と思うこと、ありますよね。でもそれ、老いや不自由という欲求不満を、無意識にほかへぶつけている(=適応機制)のかもしれません。「困った人」ではなく「困っている人」。防衛機制を知ると、相手の言動の裏側が読めるようになります。そして——この地図は、あなた自身にも効きます。夜勤明けのイライラ、うまくいかない日の言い訳。それも心が自分を守る反応だと知っておくと、少し楽になりますよ。

1枚でつかむ:こころのはたらきの流れ
思考 → 感情・情動 → 認知 → 適応 → 適応機制(守る)
1

思考

考えること・思うこと、その過程。合理的思考(問題解決へ向かう)と自閉的思考(空想的で非現実的)の2つの型がある。

2

感情・情動

行動の原動力。扁桃体が感情を司り、安全か危険かを見分ける。身体的な表出をともなう激しい感情が情動

3

認知・知能

注意・知覚・判断で外界をとらえる。加齢に強い結晶性知能と、加齢で衰えやすい流動性知能

4

適応

欲求と環境が折り合った状態。内的適応(主観的な充足)と外的適応(社会的な受け入れ)。うまくいかないと不適応

5

適応機制(防衛機制)

欲求不満のとき、心の安定を得ようとする無意識の解決方法。逃避・防衛・攻撃の3系統に分かれる。

1. 思考と感情・情動のしくみ
合理的思考/自閉的思考/扁桃体と感情

思考とは、考えること・思うこと、そしてその過程のこと。行動として現すのを抑え、内面的に言語によって情報を集め処理する過程です。思考には2つの型があります。合理的思考は、問題に直面したときふさわしい解決を目指す「方向付けられた思考」で、概念・判断・推理から成り立ちます。もう1つの自閉的思考は、空想のようにとりとめのない連想から生じる非現実的思考です。

ざっくり言うと、合理的思考=「どう解決するか」に向かう考え自閉的思考=空想・妄想的なとりとめのない考え。試験ではこの2つの対比が問われます。「方向付けられた思考」という言い回し=合理的思考、と紐づけて覚えておくと引っかけに強くなります。

感情は日常生活で行動の原動力となり、行動を支配する重要な役割をもちます。脳では扁桃体が感情を司り、生物が生きるうえで安全で有益か・危険で有害かを見分ける評価判断を担っています。感情は狭義には快・不快の次元で刺激に反応する比較的単純な意識レベルですが、身体的な表出(動悸・発汗など)をともなう一過性の激しい感情を広義にとらえたものが情動で、感情とほぼ同義に使われることもあります。

扁桃体=感情(恐怖・不安・悲しみなど)の中枢。前頭前野(前頭葉)が扁桃体を制御し、理性的な状況判断を担う。「感情=扁桃体」はセットで頻出。

2. 認知と知能のしくみ
認知とは/結晶性知能・流動性知能

認知とは、物事に注意を向け、言葉を理解し、状況を判断しながら自分の周囲の環境をとらえるはたらき。精神医学的には知能を、心理学的には知覚を中心とした意味でとらえられます。知能について D.ウェクスラーは「目的に行動し、合理的に思考し、環境を効果的に処理するための個人の全体的能力」と定義しました。個々の能力ではなく多面的・全体的な能力ととらえる考え方です。

種類(キャッテル)内容加齢との関係(国試ポイント)
結晶性知能
言語性検査で測定
過去の経験や学習の積み重ねで、知識・教養が「結晶」となってでき上がった知能。学校教育や社会で培われる加齢による低下が少ない。得てきた経験が影響するため、高齢になっても保たれやすい
流動性知能
動作性検査で測定
新しいことを学ぶ・新しい環境に適応するときにはたらく知能。瞬間的なひらめきや空間的認知などピークは25〜30歳頃、60歳頃までは維持され、65歳前後で低下(70歳代で急速に低下)

見分け方:結晶=積み重ね(経験・知識)で加齢に強い流動=その場のひらめき・適応で加齢に弱い。「流れて(流動)いく=衰えやすい」とイメージで覚える。

3. 適応のしくみと不適応
内的適応・外的適応/不適応と適応機制

P.M.サイモンズは適応を「有機体とその環境との満足すべき関係」と定義しました。適応には2種類あります。内的適応は、その人自身が主観的に充足し、要求水準が満たされて幸福感をもつ状態外的適応は、客観的に見てその人が社会的・文化的規範に従い、他者と協調し受け入れられている状態です。この内的適応と外的適応がうまくいかない状態を不適応といい、不適応になると人は心の安定を図るため、無意識のうちに適応機制をはたらかせます

また適応には、環境に合わせて自分が満足する状態をつくる受動的側面と、満足できない環境に自分からはたらきかけて改善する能動的側面があります。
なお S.ライチャードは、引退後の高齢者を適応タイプ(円熟型・安楽椅子型/依存型・防衛型/装甲型)不適応タイプ(外罰型/憤慨型・内罰型/自責型)の5類型に整理しました。これは年齢差別(エイジズム)につながる恐れがあるため、興味本位でなく課題を認識し生活を改善するために用いるべきものとされています。

4. 適応機制(防衛機制)の種類
逃避・防衛・攻撃の3系統/各機制の見分け

すべての欲求を満たせる人はまれです。さまざまな環境に適応して生きるには、欲求不満をほかの手段で解消・緩和する必要があります。その方法が適応機制(欲求不満への防衛機制)——緊張や不安などの不快な感情を和らげ、心理的な安定を得ようとする無意識の解決方法です。適応機制は大きく次の3つに分類されます。

① 逃避機制

原因を回避することで自我の崩壊を防ぐ

② 防衛機制

欲求不満に陥ったとき、積極的に自らの感情をコントロールし、不快になることを防ぐ。

③ 攻撃機制

欲求を満たすため妨害しているものを攻撃し、不快な緊張を解消する。

● 適応機制(防衛機制)の分類と具体例

系統機制の名前意味と具体例
逃避機制逃避苦しく辛い現実から逃げ、一時的に心の安定を求める。
例:宿題をしていなかったので、腹痛だと言って学校を休む
白昼夢(空想)白昼夢のようにイメージだけの活動で満足し、現実から逃避する
防衛機制代償・補償代償=欲求が満たされないとき似た別のもので満足(例:コンサートに行けず CD を買う)。補償=ある面の劣等感を別の面の優越感で補う(例:成績の悪い学生がスポーツに熱中する)
昇華すぐ実現できない欲求を、社会的・文化的価値の高い活動で代償する。
例:失恋の悲しみをスポーツに向ける
同一化(同一視)自分にない名声や権威に自分を近づけ、自らの価値を高めようとする。
例:好きなアイドルとまったく同じ髪型・服装にする
合理化一見もっともらしい理由をつけて自分を正当化する。
例:テストで0点のとき「前日忙しくて勉強しなかったから」と言う
抑圧実現困難な欲求を心の中に押さえ込んでしまう。
例:目の前の悲しい出来事を受け入れず心を閉ざす
退行耐えがたい事態に直面したとき、発達の未熟な段階に後戻りして自分を守る。
例:弟が生まれ親の注目が向かないので、駄々をこねて注目を得ようとする
投射(投影)自己の欠点や感情を他人へ置き換え・転嫁して自分を守る。
例:私が彼を嫌いなのではなく、彼が私を嫌っている(と思い込む)
置き換え・反動形成置き換え=ある対象への欲求や感情を別の対象に向けて表現(例:ディズニーランドは遠いので近所の公園へ)。反動形成=本当の欲求と正反対の行動で本心を隠す(例:好きな人にわざとそっけない態度)
攻撃機制攻撃他人や物を傷つけるなどして欲求不満を解消する。直接的なものと間接的なものがある。
例:親に注意されて腹が立ち、弟に八つ当たりをする

出典:介護福祉士実務者研修テキスト5「図表1-2-7 適応機制(防衛機制)分類」に基づき整理。国試では「具体例 → 機制名」を答える/取り違えを見抜く問題が頻出。特に合理化・投影(投射)・退行・昇華・反動形成の混同に注意。

欲求不満 (フラストレーション) ① 逃避機制 逃避 白昼夢(空想) ② 防衛機制 代償・補償/昇華 同一化(同一視) 合理化/抑圧 退行/投射(投影) 置き換え 反動形成 ③ 攻撃機制 攻撃 (直接的・間接的)

欲求不満に陥ったとき、心は逃避・防衛・攻撃のいずれかの適応機制をはたらかせて安定を取り戻そうとする。防衛機制がもっとも種類が多く、国試でも中心的に問われる。

5. 適応とストレス
ストレッサー/ストレス反応/ストレスコーピング

ストレスとは「心身の適応能力に対して課せられる欲求と、その欲求によって引き起こされる心身の緊張状態を包括する概念」。引き金となる欲求(出来事)をストレッサー、生じた緊張状態をストレス反応とよびます。出来事が自分の対処能力を超えた脅威と感じられるときに、ストレス反応(症状・行動)が生じます。

● ストレス反応の3種類

① 身体的反応

動悸・発汗・頭痛・腹痛・不眠 など

② 心理的反応

不安・気力/集中力の低下・落ち込み・怒り など

③ 行動的反応

生活の乱れから好ましくない行動へ。ギャンブルへののめり込み、飲酒・喫煙の増加 など

心理的ストレスを軽減するための試みや行動をストレスコーピングといいます。目的によって2つに分けられます。

種類内容具体例
問題焦点型
コーピング
問題の情報を集め、計画を立て、具体的に行動して状況そのものを解決する解決法を考える/手順の計画を立てる/原因を考え積極的に行動する
情動焦点型
コーピング
問題の直接的な解決ではなく、そこから生じる情動(気持ち)に焦点を当てる話を聴いてもらう・愚痴を言う/趣味や運動で気晴らし/ポジティブに捉え直す
WORD:適応機制(防衛機制)
国試で問われる用語

欲求不満に陥ったときに、緊張や不安などの不快な感情を和らげ、心理的な安定を得ようとする無意識の解決方法。「欲求不満への防衛機制」とも呼ばれ、逃避機制・防衛機制・攻撃機制の3つに大別される。ポイントは「無意識のうちにはたらく」こと——本人は自分を守ろうとして意図的にやっているわけではない。介護現場では、利用者の理解しにくい言動(急な怒り=攻撃/子どもがえり=退行など)を読み解く手がかりになり、同時に援助者自身の心を守る仕組みでもある。

試験に出るところ
本音でまとめる
理解度チェック
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Q1. 「テストで0点だったとき、『前日に用事があって勉強できなかったからだ』ともっともらしい理由をつけて自分を正当化した」。これはどの適応機制?

正解はB(合理化)。一見もっともらしい理由をつけて自分を正当化する防衛機制です。Aの昇華は、実現できない欲求を社会的・文化的価値の高い活動へ向けること(例:失恋の悲しみをスポーツに)。Cの投影(投射)は、自分の欠点や感情を他人へ転嫁すること(例:私が嫌っているのではなく彼が私を嫌っている)。「言い訳=合理化」で覚えましょう。

Q2. 「弟が生まれて親の注目が自分に向かなくなったので、駄々をこねて赤ちゃんのように振る舞い、注目を得ようとした」。この適応機制はどれ?

正解はC(退行)。耐えがたい事態に直面したとき、発達の未熟な段階に後戻りして自分を守る防衛機制です。「子どもがえり」がキーワード。Aの反動形成は本心と正反対の行動をとること(例:好きな人にわざとそっけなくする)、Bの抑圧は実現困難な欲求を心の中に押さえ込むことで、行動として後戻りする退行とは区別します。

Q3. 知能に関する記述で、適切なものはどれ?

正解はB。流動性知能は新しいことの学習や新しい環境への適応ではたらき、ピークは25〜30歳頃、65歳前後で低下します。Aは逆で、結晶性知能は過去の経験・知識の積み重ねなので加齢による低下が少ないのが特徴です。Cは誤りで、適応機制は「無意識のうちに」はたらく解決方法です(意識的ではない点が重要)。
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