からだを動かす「運動器」を系統的に整理。骨格の役割と骨の構造、筋肉の3分類(骨格筋・平滑筋・心筋/随意・不随意)、関節の種類と可動域、そして主動筋と拮抗筋の協調まで、国試で答えられる形にまとめます。
腕を曲げる、立ち上がる——なにげない動作の裏で、骨・筋・関節が役割分担している。仕組みを知ると、介助で「どこがどう動くか」が読めるようになります。
人が動けるのは、骨(支える)・関節(つなぐ)・筋肉(縮んで力を出す)・神経(指令を送る)がひとつのチームとして働くから。これらをまとめて運動器と呼びますわ。今回はその中でも骨・筋・関節を、系統立てて掘り下げます。骨は約206個で体を支え内臓を守り、筋肉は骨格筋・平滑筋・心筋の3種類にわかれ、関節はその形によって動ける方向が決まっています。ひとつずつ分類の軸をつかめば、暗記ではなく「なるほど」で覚えられますよ。
ここは分類が命。試験でも「どれが随意で、どれが不随意か」「横紋筋はどれか」がストレートに問われます。特にひっかけの王様が心筋——心臓の筋肉なのに、骨格筋と同じ横紋筋。でも自分の意思では止められない不随意筋。この「横紋だけど不随意」の一点を落とすと、まるっと失点します。関節も、球関節=ぐるぐる/蝶番関節=ドアのように一方向、と形でイメージすれば忘れません。丸暗記より、体で動かして覚えるのが近道ですよ。
複数の骨が組み合わさってからだを支え、内臓を守る。成人の骨は約206個。運動の支点にもなる。
支持・保護・運動の支点に加え、骨髄での造血、カルシウム(体内の99%)やリンの貯蔵も担う。
骨と骨の連結部。可動結合が動きを生み、形によって動ける方向(可動域)が決まる。
骨格筋が収縮して関節を動かす。筋肉は骨格筋・平滑筋・心筋の3種類にわかれる。
片方が縮むともう片方がゆるむ。相反する2つの筋の協調で、曲げ伸ばしがなめらかになる。
複数の骨から形成される骨格は、からだの構造を支え、臓器を保護する役割を担います。保護する臓器によって骨の大きさや形が異なるのが特徴です。脳を守る頭蓋骨は「縫合」という複雑なつなぎ方で固く連結され、心臓と肺を守る胸郭は12対の肋骨・12個の胸椎・1個の胸骨で籠(かご)状に形成されます。からだの支柱である脊柱はリング状の椎骨が連なって脊髄を囲み保護し、生殖器・消化器・泌尿器を守る骨盤は寛骨(腸骨・恥骨・坐骨)・仙骨・尾骨からなります。
骨格は「体を支える棚」であり「臓器を守るヘルメット」でもあります。だから守る中身に合わせて形が変わる——脳はガチガチの頭蓋骨(縫合)、心臓や肺は伸び縮みできるよう関節や軟骨でつながった籠状の胸郭、というわけ。胸郭=肋骨12対・胸椎12個・胸骨1個の数字はそのまま出題されるので、セットで覚えておくと得します。
からだの構造を支え、姿勢を保つ骨組みになる。
脳・心臓・肺・内臓などを外力から守る。
付着する筋肉のはたらきで、動きの「てこの支点」になる。
骨髄で血液をつくる。主に胸骨・肋骨・脊椎などの扁平骨・短骨で行われる。
カルシウム・リンなどを蓄える。体内カルシウムの99%は骨にある。
骨吸収が骨形成を上回ると骨量が減る。骨粗鬆症の背景。
成人の骨は約206個。骨は「硬い支柱」であると同時に、血をつくり栄養(電解質)を蓄える“生きた組織”でもある。
筋肉はからだを動かすだけでなく、呼吸運動や胃腸の消化運動なども担っています。筋肉は構造やはたらきの違いによって骨格筋(横紋筋)・平滑筋(内臓筋)・心筋の3つに分けられます。分類の軸は2つ、「横紋があるか(横紋筋/平滑筋)」と「自分の意思で動かせるか(随意筋/不随意筋)」です。
| 種類 | 構造(横紋/平滑) | 意思(随意/不随意) | おもな場所・はたらき |
|---|---|---|---|
| 骨格筋 (=横紋筋) | 横紋筋 | 随意筋 (意思で動かせる) | 骨に付着。腕・足の筋肉、腹筋、背筋など。収縮して関節を動かし、姿勢も保持する |
| 平滑筋 (=内臓筋) | 平滑筋 (横紋なし) | 不随意筋 (意思で動かせない) | 胃・腸のぜん動運動、消化器・泌尿器の壁、血管壁など。内臓のはたらきを担う |
| 心筋 | 横紋筋 ⚠骨格筋と同じ | 不随意筋 ⚠意思と無関係 | 心臓だけにある。規則正しく収縮と拡張を繰り返し、状況に合わせて休みなく動く |
⚠ 最頻出のひっかけ=心筋。「横紋筋」なのに「不随意筋」。“横紋筋=随意筋”とは限らない点を必ず区別。骨格筋だけが横紋筋かつ随意筋。
骨格筋の部位:からだの中心に近い側を筋頭、遠い側を筋尾、中央を筋腹という。骨に付着させる組織が腱。
骨と骨をつなぐ連結部分が関節です。関節には可動性(動く)と支持性(支える)のはたらきがあります。骨の連結には、ほとんど動かない不動結合(頭蓋骨の縫合など)と、比較的自由に動く可動結合があり、私たちが「関節」と呼んで動かしているのは可動結合です。可動結合では関節包の内側の滑膜が滑液をつくり、潤滑油となって滑らかに動かします。
関節は、向かい合う骨の形(関節頭と関節窩の形)によって動ける方向が決まります。代表的な種類は次のとおりです。
| 関節の種類 | 動ける方向 | 代表的な関節 |
|---|---|---|
| 球関節 | あらゆる方向(多軸性)。可動域が最も広い | 肩関節・股関節 |
| 蝶番(ちょうつがい)関節 | 一方向のみ(一軸性)。ドアの蝶番のように曲げ伸ばし | 肘関節・膝関節・指の関節 |
| 鞍(あん)関節 | 2方向(二軸性)。鞍のような形で直交2方向に動く | 母指(親指)の付け根の関節 |
| 車軸関節 | 回旋(軸を中心にまわる) | 前腕の橈尺関節・首の環軸関節 |
| 楕円関節 | 2方向(二軸性)。楕円形でだ円状に動く | 手首(橈骨手根関節) |
| 平面関節 | わずかに滑る程度 | 椎間関節など |
「動く範囲」そのものは関節可動域(ROM)という。球関節(肩・股)=広い/蝶番関節(肘・膝)=一方向の2つは最頻出。
関節運動は、伸展と屈曲・外転と内転・外旋と内旋・回外と回内の8つに分けられます。関節を伸ばすのが伸展、曲げるのが屈曲。正中線(からだの中央を縦に通る線)から外側へ遠ざけるのが外転、近づけるのが内転。外側へひねるのが外旋、内側へひねるのが内旋。肘を90°曲げて手のひらを上へ向けるのが回外、下へ向けるのが回内です。
ひとつの運動は、複数の筋肉の協調で生まれます。同じ方向にはたらく骨格筋を協力筋(主動筋)、相反する動きをする骨格筋を拮抗筋(きっこうきん)といいます。主動筋が縮むとき、拮抗筋はゆるむ——このシーソーのような関係で、動きがなめらかに、そして安定します。代表例が肘の曲げ伸ばしで、曲げる(屈曲)ときは上腕二頭筋が縮んで上腕三頭筋がゆるみ、伸ばす(伸展)ときは上腕三頭筋が縮んで上腕二頭筋がゆるみます。
肘を曲げる(屈曲)ときは上腕二頭筋が主動筋、上腕三頭筋が拮抗筋。伸ばす(伸展)ときは役割が入れ替わる。片方が縮めば片方がゆるむ、この相反支配が滑らかな動きを生む。
随意筋=自分の意思で動かせる筋肉。骨格筋がこれにあたり、腕・足を動かす、力を入れるといった随意運動を担う。不随意筋=自分の意思では動かせない筋肉で、平滑筋(内臓筋)と心筋がこれにあたる。胃腸のぜん動や心臓の拍動が、眠っている間も止まらないのはこのため。分類の落とし穴は心筋=横紋筋だが不随意筋という点。「横紋があるか」と「意思で動かせるか」は別の軸として整理すること。
Q1. 筋肉の分類について、正しい組み合わせはどれ?
Q2. 関節の種類とその特徴で、適切なものはどれ?
Q3. 主動筋と拮抗筋、関節運動に関する記述で、適切なものはどれ?