← 国試の間に戻る
生活支援技術Ⅱ・第1章 Lesson 3-①
21

食事の介助①|姿勢・感覚・運動・認知機能別

「ベッド30°・健側から食べる・健側に介護職」を体で覚える

座位・車いす・ベッド上の姿勢別、感覚・運動・認知の状態別の食事介助を、国試で答えられる形に整理。

食事介助は「姿勢が9割」。誤嚥事故の多くは姿勢の崩れから起きます。

アテナ様の導き

食事介助の核は姿勢です。座位なら足底床・背筋・拳1つ分、ベッド上なら頭側30°ギャッチアップ+頭部やや前傾。麻痺がある人は麻痺のない側(健側)の口から食べ物を入れます。感覚や認知が低下した人にも、それぞれ「認識できる工夫」を施します。視覚障害ならクロックポジション、視野障害なら認識できる側に食事を移動、認知症の異食予防など、状態に合わせて手段を選ぶことが大切です。

アテナ様の導き(本音モード)

食事介助で一番危ないのは「頭が上を向いた状態で口に入れる」こと。これだけで誤嚥リスクが跳ね上がります。ベッド上なら頭側30°、頭は少し前傾。これが鉄則。あと、片麻痺の人の介助で介護職が患側に立つのはNG健側に立つのが正解。理由は「健側の口から食べ物を入れる」「患側の食物残渣を確認する」の2つ。「弱い側から入れちゃダメ・弱い側に座らせちゃダメ」のセットで覚えましょう。

1枚でつかむ:食事介助の4つの視点
姿勢・感覚・運動・認知のどこに合わせるか
🪑

姿勢

座位/車いす/ベッド上で、誤嚥しない姿勢を作る。

👁️

感覚機能

視覚・視野・味覚の低下を、道具と環境で補う。

運動機能

自助具・食事形態の工夫で、自力で食べるを支える。

🧠

認知機能

失認・失行・記憶障害に、気づき・誘導・量の調整で対応。

姿
1. 姿勢別の食事介助
座位・車いす・ベッド上の基本姿勢
座位(いす+テーブル)
🪑
  • いすとテーブルは拳1つ分あける
  • 深く腰かけ、背筋を伸ばす
  • 足底が床にしっかりつく高さ
  • 麻痺がある場合は、麻痺側の手をテーブルに乗せる
車いす
🦽
  • 車いす用テーブルか、食べやすい高さのテーブル
  • アームサポートがテーブル下に入る高さは高すぎ注意
  • 足はフットサポートから下ろし床に足底
  • 座位の安定を保つ
ベッド上
🛏️
  • ベッド頭側を30°程度ギャッチアップ
  • 枕やクッションで頭部やや前傾
  • 頭が上を向くと誤嚥注意
  • 上体起こせない場合は健側を下にした側臥位

⚠ 麻痺がある場合の鉄則

食べ物は麻痺のない側(健側)の口から入れる。患側から入れると咀嚼できず、口腔内に食物残渣がたまって誤嚥につながる。介護職は健側に位置して介助する(同じ目線で)。

2. 感覚機能が低下している場合
視覚・視野・味覚 それぞれの工夫

👁️ 視覚障害がある場合:クロックポジション

食器の配置を時計の文字盤に見立てて説明する方法を「クロックポジション」と呼びます。「12時にご飯」「3時にみそ汁」のように、毎回同じ位置に主食・主菜・副菜を配置することで利用者が把握しやすくなります。配膳時には食器に触れてもらいながら食材や調理法を説明します。

12 3 6 9 ご飯 みそ汁 主菜 副菜
介護職が「12時にご飯です」「3時の方向にみそ汁です」と位置と料理名を説明しながら、利用者の手を誘導して食器に軽く触れて確認してもらう。

👀 視力低下・視野障害

視力低下

食器と料理のコントラストを工夫。白いご飯には濃い色の食器(黒・茶)を使うと認識しやすい。ランチョンマットで全体のコントラストも調整。

視野障害

認識できない側の食事を残しやすい。食事を認識できる側へ移動するなど、食べ残しがないように配慮する。

👅 味覚障害

高齢者は舌の上の味蕾(みらい)が若年者の約3分の1に減少します。味を認識する機能が低下するため、塩分・糖分が多い濃い味付けを好む傾向があります。

💡 味付けの工夫

調理するときに、一品は普通の味付けにして、ほかの料理は薄味にする。レモンやかんきつ類、カレー粉や唐辛子など、酸味・香り・香辛料を取り入れて味に変化をつけるとよい。

3. 運動機能が低下している場合
自助具・食事形態・介護職の位置

自分で食べ物を口に運ぶ、食器を支える、箸をもつといった動作が困難になります。それぞれの利用者に合わせて、自助具手にもって食べられる食事形態(おにぎりなど)、食べる姿勢の工夫を組み合わせ、可能な限り自力で食べてもらいます。

🥄 自助具の活用

柄が太い・曲がっている・滑り止め付きなど、利用者の手の動きに合わせた道具を選ぶ。

🍙 食事形態の工夫

手にもって食べやすい形(おにぎり、サンドイッチなど)を活用。

🤲 一部介助の方法

スプーンを持つ手に介護職が手を添える、一口量を乗せたスプーンを手渡すなど。

⚠ 介護職は「健側」に位置する

片麻痺で安定した座位が保てる場合、介護職は健側に位置し、利用者と同じ目線で介助する。健側に位置することで、患側の食物残渣(口の中に残った食べかす)を確認しやすくなる。

4. 認知・知覚機能が低下している場合
失認・失行・記憶障害・異食への対応

認知・知覚機能とは、五感を通して得た刺激を理解し、経験・知識・記憶を基に判断する機能です。低下すると、失認(見えていても認識できない)、失行(運動機能に問題がないのに行動できない)、記憶障害などが生じます。

失認

目の前の食べ物を食べ物と認識できない。食事の時間意識づけ、献立を伝える、手洗いや口腔体操で食事の準備を整える、使い慣れた食器・好きなものを用意して、食事を認識しやすくする。

失行

箸やスプーンを使って口に運ぶ動作ができない。茶わんや箸をもつように誘導する、箸やスプーンを持つ手に介護職が手を添えて食べ物をすくって口に運ぶ動作を繰り返すと有効。

記憶障害

食べたことを忘れる。1回の食事量を減らして回数を増やす、空腹感を満たすために低カロリーの食品を提供。食事環境を整え、食べたことが記憶に残りやすい工夫も。

異食

認知症がある場合、食べ物以外を口にすることがある。特に口に入れると危険なものは手の届かない所に置いておく。

💡 観察と家族情報の活用

利用者との会話・表情・しぐさ・家族からの情報を基に、利用者が求めている食事内容や介助方法を検討する。「いつもの好物」「子どもの頃よく食べたもの」などが、失認の壁を超える鍵になる。

5. 状態別まとめ表
機能と工夫を一覧で
機能状態工夫・介助方法
姿勢座位拳1つ分・足底床・背筋・麻痺側はテーブル
車いすテーブル高さ調整・足を床に
ベッド上頭側30°・頭部前傾・健側下の側臥位(起こせない場合)
感覚視覚障害クロックポジション・触れて確認
視野障害認識できる側へ食事を移動
味覚障害一品は普通味+他は薄味+酸味/香り/香辛料
運動動作困難自助具・手にもてる形態・健側に介護職
認知失認時間意識づけ・献立伝達・慣れた食器
失行もつ動作の誘導・手添え
記憶障害1回量を減らし回数増・低カロリー
異食危険物を手の届かない所に
試験に出るところ
本音でまとめる
理解度チェック
押すと答えが出ます

Q1. ベッド上で食事介助をするときの姿勢として最も適切なのはどれ?

正解はB。ベッド上では頭側を30°程度ギャッチアップし、頭部をやや前傾させます。頭が上を向くと誤嚥リスクが上がります。上体を起こせない場合は健側(麻痺のない側)を下にした側臥位にします(Dは患側下なので誤り)。

Q2. 視覚障害がある利用者の食事介助で、配膳の方法として最も適切なのはどれ?

正解はB。クロックポジションといいます。毎回同じ位置に主食・主菜・副菜を配置し、時計の文字盤に見立てて位置を説明、食器に触れてもらって確認します。これで利用者は自立して食べられます。

Q3. 片麻痺がある利用者の食事介助で、介護職の位置として最も適切なのはどれ?

正解はB。介護職は健側に位置し、利用者と同じ目線で介助します。健側の口から食べ物を入れることで誤嚥を防ぎ、健側にいることで患側に残った食物残渣も確認しやすくなります。

Q4. 認知症で食べ物を食べ物と認識できない(失認)利用者への対応として最も適切なのはどれ?

正解はC。失認の場合、食事の時間意識づけ、献立を伝える、手洗いや口腔体操で食事の準備を整える、使い慣れた食器・好きなものを用意するなど、利用者が食事を認識しやすくする工夫が大切です。
← 前へ21 / 38次へ →