嚥下のしくみ・脱水と誤嚥の予防・窒息時の応急処置を、国試で答えられる形に整理。Lesson 3の最終回。
誤嚥性肺炎は介護現場で最も多い「予防可能な死因」のひとつ。姿勢・形態・水分で防げます。
高齢になると嚥下反射と咳反射が弱くなり、食べ物が気管に入っても咳でだせないことが増えます。これが誤嚥性肺炎の入り口。さらに、口渇中枢の反応が低下して喉の渇きを感じにくく、脱水も起きやすい。「気管に入れない」「水を切らさない」の2本柱で守ります。窒息時は背部叩打法と腹部突き上げ法(ハイムリック法)を即座に。
食事介助のなかで一番危ないのが「お茶や水」です。意外でしょ。サラサラした液体ほど気管に入りやすいんです。だからとろみ。とろみは見た目で「飲みづらそう」と思われがちですが、実は最も安全な水分の摂り方。脱水もよくある落とし穴で、「トイレが面倒だから飲まない」高齢者は本当に多い。飲まなさを責めず、飲める環境を整えるのが介護職の仕事です。
食べ物が気管に入る。誤嚥性肺炎へつながる。
気管に異物が詰まる。即時対応が必要。
口渇中枢低下で気づきにくい。意欲・循環に影響。
咀嚼とは口腔内で食べ物を唾液と混ぜながらかみ砕くこと。嚥下とは食道内に食べ物を送ること。咽頭内では気管と食道が隣接していて、食物が食道に入るとき、気管の入り口が一時的に塞がれる仕組み(喉頭蓋が気管の入り口をふさぐ)になっています。
咀嚼した食べ物が咽頭へ移動
鼻腔への逆流を防ぐ
気管の入り口がふさがれ、食道へ
誤嚥しても、若い人は強く咳き込んで異物を吐き出すことができる。しかし高齢者はこの反射が弱くなり、咳をだすことが難しくなる。異物がそのまま肺内にとどまって感染を起こし、気管支炎や誤嚥性肺炎を発症することもある。
誤嚥リスクをしっかり評価。適切な姿勢・食事形態を医療職と検討する。
口腔内・咽頭に食物残渣が残りやすいため、固形と液体を交互に摂って嚥下を促す。
お茶や水で食物残渣を流す。口腔内に残さない。
義歯の洗浄・歯磨きで口腔内の清潔を保ち、誤嚥性肺炎を予防。
高齢者は口渇中枢の反応低下により喉の渇きを感じにくいため、水分不足になりやすく容易に脱水を起こします。さらに、トイレへの移動が困難、尿失禁を気にして飲水を控える、認知機能障害で水分摂取への理解低下などの原因も重なります。
水分不足は便秘・発熱・認知症の悪化を招き、心筋梗塞・脳梗塞のリスクも高めます。口腔内乾燥から口内炎・唾液腺炎、尿量減少から膀胱炎などの尿路感染症も起こりやすくなります。
必要に応じて測定・記録する。脱水状態を客観的に把握する。
食事のとき・入浴前後など、意識して水分を摂る習慣を提案。健康維持につながることを説明する。
排泄動作の困難や介護職への気兼ねで水分を控えがち。遠慮は必要ないと伝え、日中に十分摂れるよう環境を整える。コーヒー・ビールは利尿作用に注意。
体外への水分喪失が大きい。多めの水分を適切な方法で摂取できるよう工夫する。
誤嚥は、咀嚼・嚥下反射がうまくいかず、食べ物が気管に入ることで起きます。義歯の不具合や、いったん胃に入った食べ物の逆流でも起こりえます。呼吸が速くなる・表情が険しくなるなどのサインに気づくため、普段からのこまめな観察が大切です。
顎を上げた状態は咽頭と気管が直線になり誤嚥しやすい。上体・頭部をやや前傾。臥位の場合はベッド頭側30°ギャッチアップ、麻痺がある場合は健側を下にした側臥位。
傾眠状態では誤嚥リスクが高い。目を覚ましてから食事を始めるよう促す。
口腔内と食道を湿らせて、食べ物の通過を滑らかにしてから食べる。
「ごっくん」と飲み込んだことを喉の動きで確認してから、適切な一口量を口に運ぶ。
後述の表を参照。
液体は誤嚥しやすい。とろみをつける/寒天で固める/ペースト状・ムース食などで安全に。
気管内に食べ物や異物が詰まり窒息すると、激しい咳き込み・喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)・呼吸困難・苦痛の表情・チアノーゼなどが現れます。進行すると痙攣・意識消失・呼吸停止に至ります。即座に異物除去を行います。
利用者の胸に手を当て、もう一方の手の付け根で肩甲骨の間を叩く方法。
手のひらの付け根で「ドンッ」と叩く
後ろから抱きかかえ、片方の握りこぶしをみぞおちのやや下に当て、もう一方の手を重ねて斜め上方に圧迫する。
腹部圧迫で胸郭・気管内圧を上げ、異物を吐きださせる
突然の激しい咳き込み・喘鳴・呼吸困難・苦痛の表情・チアノーゼ──これらは窒息の警告サイン。誤嚥の様子がみられたら即時に応急処置+医療職へ連絡。
Q1. 高齢者が脱水を起こしやすい理由として最も適切なのはどれ?
Q2. 嚥下機能が低下した利用者の食事介助で、最も適切なのはどれ?
Q3. 窒息時の腹部突き上げ法(ハイムリック法)の禁忌として正しいのはどれ?
Q4. 誤嚥を予防するための食事介助として、最も適切なのはどれ?