排泄の13ステップ
つまずきの場所を見つける地図
「排泄ができない」を13個に分解すると、その方が本当に必要な介助が見えてくる ─ 残存能力を活かすケアの起点
「排泄ができない」を13個に分解すると、その方が本当に必要な介助が見えてくる ─ 残存能力を活かすケアの起点
普段「トイレに行く」と一括りで考えがちな排泄行為は、実は13の連続した動作でできています。尿意を感じるところから始まり、移動・脱衣・排泄・清拭・着衣・手洗いまで。
介護の現場では「どのステップでつまずいているか」を見極めることが最重要。すべてを介助するのではなく、本人ができるところは任せることで、残存能力と尊厳を守ります。
「トイレ行ってきま〜す」って1つの動作に見えるけど、実は13個の動きのかたまりですの。尿意を感じる→意思表示→歩く→ドア開ける→服おろす→座る→排泄→拭く→服上げる→流す→手洗い…って具合に。
介護で大事なのは「どこでつまずいてるか」を見つけること。全部手伝う必要はなくて、本人ができるところは本人にやってもらう。これが自立支援ですわ。
「トイレ介助が必要」と書いてしまうと全介助が必要なのか部分介助なのか分からない。13ステップで分解すると、「ステップ4の歩行だけ介助、それ以外は自立」のように具体的なケアプランが立てられる。これが「できることを奪わない介護」の出発点です。
・排泄行為は連続した13の動作で構成
・つまずいているステップだけを介助するのが原則
・残存能力の活用=自立支援の核
・利用者の尊厳・羞恥心に最大限配慮する
排泄の13ステップは4つのフェーズ(準備・移動・排泄・後始末)に分かれます。フェーズが変わるごとに必要な能力が変わるため、つまずきの原因を見極めやすくなります。
1〜13の中身は、準備・移動・排泄・後始末の4つのまとまりに分けられますの。色違いで見ると、それぞれ違う能力が必要なのが一目瞭然。
膀胱・直腸の充満を脳で知覚する。認知症や脊髄損傷では感覚自体が低下することがある「あ、トイレ行きたい」と気づく段階。ここでつまずくと失禁になりやすい
「トイレに行きたい」と言葉やサインで伝える。失語症や認知症では意思表示が難しい「トイレ」と言える・指差せる・サインを送れること。伝わらないと介助のタイミングを逃す
椅子・ベッドから立位を取る。下肢筋力・体幹バランスが必要立ち上がり動作。膝が痛い・足腰弱いとここでつまずく
歩行・車いす操作でトイレまで到達。歩行能力・空間認知・障害物回避が必要トイレまでの道のりを歩く・転がる。距離が長いと間に合わない場合も
トイレの場所・便器を視覚的に認識。認知症では便器とゴミ箱を間違えることもある「ここがトイレ」と分かること。認知症で迷子になる方は表示を工夫する
ドアノブの把持・回旋・押し引き動作。手指機能・力が必要ドアを開ける・閉める・鍵をかける。手の動きが弱いとつらいステップ
ボタン・ファスナー・ゴム紐の巧緻動作。手指機能・両手協調が必要ズボン・パンツを下ろす。間に合わずに失禁することが多いポイント
便座への方向転換・着座動作。体幹保持・下肢支持が必要便座に座る動作。バランス崩すと転倒のリスク。手すりで支援
腹圧調整・括約筋制御。神経・筋機能・心理的リラックスが必要本番の排泄。緊張すると出ない・力みすぎても出ないのでリラックス環境が大事
トイレットペーパーで後始末。手指機能・上肢可動域・体幹回旋が必要。女性は前から後ろに拭く(感染予防)お尻を拭く動作。手が届かない・力が入らないとここでつまずく。女性は前→後ろが鉄則(尿路感染予防)
立位を取りつつ衣服を整える二重課題。バランス・巧緻動作が必要立って服を上げる。立ち上がりと巧緻動作の二重作業でつまずきやすい
レバー操作・ドアの開閉・退室動作。記憶・手順理解が必要水を流して出る。認知症では流し忘れ・退室忘れが起きやすい
蛇口操作・石鹸での手洗い。感染予防の最終ステップ手洗い。感染予防の要。省略する方には声かけで促す
・排泄は準備(1〜3)・移動(4〜6)・排泄(7〜9)・後始末(10〜13)の4フェーズ
・女性の清拭は前から後ろ(尿路感染予防)
・最後のステップ「手洗い」は感染予防の要
・つまずきステップを具体的に特定するのが介護計画の起点
13個全部を一度に覚えるのは大変。4つのフェーズで捉えると、つまずきの原因と必要な介助が見えやすくなります。
13個全部を暗記しなくても大丈夫。準備・移動・排泄・後始末の4ブロックで考えれば、現場で応用できますわ。
Phase 1で困る方:認知症・脊髄損傷 → 尿意の感覚低下/意思表示不可
Phase 2で困る方:歩行障害・視覚障害・認知症 → トイレに辿り着けない
Phase 3で困る方:手指麻痺・関節リウマチ → ボタン・脱衣ができない
Phase 4で困る方:上肢可動域制限・認知症 → 拭けない/手順を忘れる
・Phase 1〜2でつまずく → 失禁につながりやすい
・Phase 3でつまずく → 排泄行為自体ができない
・Phase 4でつまずく → 衛生・感染の問題が出る
・どのフェーズでつまずくかで介助方法と福祉用具が変わる
排泄ケアの原則は「できないところだけ手を貸す」。同じ「失禁」でも、Step 1の感覚低下が原因か、Step 4の移動が間に合わないのが原因かで、対応はまったく変わります。
「排泄介助=全部やる」じゃなくて、つまずいてる1〜2ステップだけに絞るのがプロの仕事。本人ができることまで奪わないのが介護の鉄則ですの。
認知症・脊髄損傷で感覚低下。本人が気づかないまま失禁する
排泄パターン記録→決まった時間にトイレ誘導(定時誘導)。失禁=本人の責任ではないと理解する
歩行が遅い・距離が遠い・見つけられず迷う
居室をトイレ近くに変更/ポータブルトイレ導入/案内表示の工夫(矢印・色分け)
手指麻痺・関節リウマチで巧緻動作困難。間に合わず失禁
ゴム紐ズボンに変更/マジックテープ付き衣類/脱衣のみ介助で他は本人
下肢筋力低下・体幹不安定で着座が不安・転倒リスク
L字手すり設置/補高便座(立ち座りラク)/側方からの軽介助
肩関節可動域制限・体幹回旋困難で手が届かない
温水洗浄便座(ウォシュレット)活用/清拭部分のみ介助/女性は前→後ろを声かけ
認知症で手洗い手順が抜ける・水を出して終わる
声かけによるリマインド/視覚的な手順表示/習慣化のため毎回付き添う
「時間がかかるから」「失禁が怖いから」と全部介助してしまうのはNG。本人ができるステップを奪うと、残存能力が低下し、結果的に介護量が増えます。「待つ・見守る」も介護です。
各ステップを身体機能・認知機能・環境の3視点で評価すると、本人の力で解決できる方法が見えてきます。福祉用具・住環境調整・声かけ工夫で介助そのものが不要になることも。
つまずく原因は体・頭・環境の3つに分解できますの。体が原因なら福祉用具、頭なら声かけ、環境なら模様替え。原因が分かれば対策も決まる、シンプルですわ。
筋力・関節可動域・
握力・バランス・
視力・聴力
意思表示・記憶・
判断力・
場所の認識・手順理解
トイレまでの距離・
段差・照明・
手すり・福祉用具
Aさん(80歳・脳梗塞後)のケース:
● Step 4(移動)で失禁 → 環境原因(トイレが遠い) → ポータブルトイレで解決
● Step 7(脱衣)困難 → 身体機能(右麻痺) → ゴム紐ズボン+左手で扱える衣類
● Step 10(清拭)手が届かない → 身体機能(肩可動域) → ウォシュレット使用
→ 結果、介助は移動と最終確認のみに。本人の力で7割以上自立。
・残存能力=「できること」を見つけて活かす
・身体・認知・環境の3視点で評価
・福祉用具と住環境で介助量を減らせる
・過剰介助は廃用症候群の原因になる
「排泄介助」を13個に分解することで、本人のできること・できないことが明確になります。これはICFアセスメントの考え方そのもの。「できないことを減らす」のではなく「できることを増やす」のが、現代の介護のスタンダードです。
排泄を13ステップに分けるだけで、ケアは劇的に変わりますの。「全部やってあげる」から「つまずく場所だけ手を貸す」へ。これが本人の尊厳を守る介護ですわ。
● 国試の間 ⑦ 排尿・排便のメカニズム ─ おしっこの旅・うんちの旅・介護の3つのコツ
● 国試の間 ⑤ 残存能力の活用 ─ ICF視点と「できること」の見つけ方
● ブリストルスケール ─ 便のかたち7タイプ図鑑
● 排泄ケアの基礎 ─ 観察・陰部洗浄・便秘予防
● 移動・移乗のICFアセスメント ─ 「できること」を見つける地図
📺 「専門用語ゼロ」シリーズ | YouTubeで見る
「トイレに行く」という当たり前のことが、年を重ねるごとに13個の壁になっていく。介護の仕事は、その壁を本人と一緒に越える伴走ですわ。「できる」を奪わず、「できない」だけ手を貸す──これが尊厳を守るケアの真髄ですの。